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【ITニュース解説】Why I am a Multi-Cloud Skeptic

2025年09月24日に「Dev.to」が公開したITニュース「Why I am a Multi-Cloud Skeptic」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

マルチクラウド戦略はコスト削減や高可用性をもたらすと期待されがちだが、実際は複雑な構築・運用、高いデータ転送費、ベンダー管理の負担などで総コストが増大し、信頼性も低下しやすい。単一クラウドで堅牢なシステムを構築する方が現実的だと警鐘を鳴らす。

出典: Why I am a Multi-Cloud Skeptic | Dev.to公開日:

ITニュース解説

現代のITシステム開発において、クラウドサービスの利用はもはや不可欠である。多くの企業が自社のシステムをクラウド上で構築し、その利便性を享受している。そのような状況の中で、「マルチクラウド戦略」という考え方が注目を集めている。これは、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP)といった複数の異なるクラウドプロバイダのサービスを組み合わせて利用する戦略を指す。この戦略は、特定のクラウドプロバイダへの依存リスクを減らし、より柔軟でコスト効率の良いシステムを構築できるという魅力的な約束を掲げる。しかし、長年システム構築に携わってきた技術者の中には、このマルチクラウド戦略に対して懐疑的な見方を示す者もいる。彼らは、その「約束」と実際の「運用」との間に大きな隔たりがあることを指摘する。

企業がマルチクラウドに惹かれる主な動機は、単一クラウドプロバイダで大規模な障害が発生した場合の事業継続リスクや、将来的な料金値上げ、サービス変更のリスクを分散したいという思いから来る。複数のクラウドを使い分けることで、これらのリスクを低減し、最適なサービスを組み合わせることでコストも最適化できると期待される。

しかし、マルチクラウドがもたらすとされる「コスト削減」には、多くの見落としがちな側面がある。まず、複数のクラウドを利用するということは、障害対策や事業継続のため、各クラウドでシステムの一部を重複して構築する必要がある場合が多く、これに伴うインフラ費用が発生する。さらに、異なるクラウド間でデータをやり取りする際には、データ転送にかかるコストが高額になることがある。この費用は初期計画で見落とされがちだが、運用が進むと無視できない額になる。また、単一のクラウドプロバイダに利用を集約していれば、その利用量に応じた割引や、長期契約による優遇を受けられる可能性が高いが、利用を複数のクラウドに分散させると、それぞれのクラウドでの利用量が減り、これらの割引の恩恵を受けにくくなる。結果として、個々のサービスは安く見えても、全体としては割高になることもあり得るのだ。加えて、異なるクラウド間でシステムをシームレスに切り替えられるような高度な仕組みを構築するには、多大な技術的労力とそれに伴う人件費が必要となる。これらの隠れたコストを考慮すると、マルチクラウドが必ずしも総体的なコスト削減につながるとは限らない。

マルチクラウド戦略が抱えるもう一つの根本的な問題は、システムの「複雑性の増大」である。システムは複雑になればなるほど、故障のリスクが高まり、安定稼動の維持が困難になる。複数のクラウド環境を扱う場合、システムエンジニアはそれぞれのクラウドプロバイダが提供するサービスを利用するための独自の仕様、技術的な制約、さらには課金体系まで、多岐にわたる知識を習得し、維持する必要がある。例えば、クラウド間のネットワーク接続一つをとっても、各プロバイダは異なる接続方式や設定を持っているため、これらを連携させて堅牢な通信基盤を構築する作業は非常に複雑である。また、誰がどのサービスを使えるかを管理する「IDとアクセス管理(IAM)」の仕組みも、クラウドごとに異なるため、複数の環境で一貫したセキュリティポリシーを適用し管理することは、複雑さを増し、新たなセキュリティリスクを生む可能性もある。

アプリケーションの設計においても、この複雑性は顕著に表れる。複数のクラウドで同じアプリケーションを動かすことを目指すと、アプリケーションのコードが特定のクラウドに深く依存しないように「クラウド非依存」で設計する必要がある。しかし、これにより、AWSのLambda、AzureのFunctions、GCPのCloud Runといった、各クラウドが提供する独自の強力なサーバーレス機能など、そのクラウドに深く統合された特長的なサービスを十分に活用できなくなる傾向がある。これらのサービスは、そのクラウド環境ならではの大きなメリットをもたらすが、クラウド非依存を目指すことで、結果としてどのクラウドでも利用できる「最低共通機能」に限定してアプリケーションを構築せざるを得なくなり、各クラウドの真価を発揮しきれないシステムになる可能性がある。そして、システムに障害が発生した場合、異なるクラウドプロバイダにまたがる環境で原因を特定し、解決する作業は極めて困難となる。それぞれのクラウドが提供する監視ツール、ログの形式、サポート体制が異なるため、問題の切り分けや連携に膨大な時間と労力を要するのだ。

さらに、「ベンダー管理」の面でも、マルチクラウドは見えない負担をもたらす。単一のクラウドプロバイダとだけ契約していれば、窓口も一つであり、時には専任の技術担当者が付くなど、深く協力的な関係を築けるメリットがある。しかし、複数のクラウドプロバイダと契約を結ぶと、それぞれと個別に契約交渉を行い、複数の契約書やサービスレベル合意(SLA)を管理し、バラバラに送られてくる請求書を処理しなければならない。これは、情報システム部門だけでなく、法務や経理部門にとっても大きな事務負担となる。加えて、システム障害が発生した際に、問題がどのプロバイダの責任範囲にあるのかが不明確になるケースも少なくない。あるクラウドプロバイダに問い合わせれば、別のプロバイダ側の問題だと指摘され、責任の所在が曖昧になり、結果として迅速な問題解決が阻害される可能性が高まる。

日々の「運用と保守」も、マルチクラウド戦略では一層の負担となる。ソフトウェアの開発から展開、監視までを自動化する「CI/CDパイプライン」や、システムの稼働状況を監視するツール、セキュリティ対策ツールなども、複数のクラウド環境に対応できるように構築・設定する必要がある。これには、新たな開発作業や高価なサードパーティ製ツールの導入が伴うこともある。また、複数の異なるクラウドプラットフォームの技術を常に最新の状態に保つためには、エンジニアチームの継続的な学習とスキルアップが必須となる。特定のクラウドに特化した人材を個別に採用するか、既存のチームに多大なトレーニングを施す必要があり、いずれも時間とコストがかかる。さらに、各クラウドプロバイダは定期的にサービスを更新し、セキュリティパッチを適用し、新機能を追加していくが、これらの更新に複数のクラウド環境で同時に対応し、システム全体の互換性を維持していく作業は、常に続く重労働となる。

このように、マルチクラウド戦略は、表面的な「レジリエンス(回復力)」や「コスト削減」の約束を掲げるものの、その実態はコストの増加、システムの複雑化、そして運用・保守における継続的な負担を伴うことが少なくない。経験豊富な技術者の見解では、これらの運用上の複雑さとそれに伴うコストが、マルチクラウドがもたらすはずの利点を上回ってしまうケースが多々あるという。

それでは、このような課題に対してどのようなアプローチが考えられるのだろうか。筆者は、もしシステムの回復力と安定稼働が主な目標であれば、単一のクラウドプロバイダ内で、より堅牢なシステムアーキテクチャを構築することこそが、現実的で効果的な解決策だと提言している。一つのクラウドプロバイダであっても、世界中にデータセンターを分散配置し、様々な可用性向上や災害対策のための高度な機能を提供している。これらの機能を最大限に活用し、そのプロバイダが推奨する「良いシステムを作るための設計指針」に沿ってシステムを構築すれば、非常に高いレベルの回復力と安定性を実現できるのである。マルチクラウドは、初期の計画段階では魅力的に映るかもしれないが、実際の運用フェーズでは多くの企業にとって、予期せぬ困難と追加の負担をもたらす可能性が高いと言えるだろう。

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