【ITニュース解説】Terraform Modules and Workspaces: How MyCoCo Scaled from Copy-Paste to DRY Infrastructure
2025年09月20日に「Dev.to」が公開したITニュース「Terraform Modules and Workspaces: How MyCoCo Scaled from Copy-Paste to DRY Infrastructure」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Terraformで複数の開発環境を管理する際、設定の繰り返しによる手間やミスが問題となる。WorkspacesとModulesの活用で、共通のインフラ設定を部品化し、環境ごとの違いだけを切り替えることが可能だ。これにより、一つのコードで全ての環境を効率的に管理でき、メンテナンス時間の削減や設定ミスの防止につながる。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、インフラを効率的に管理することは非常に重要なスキルとなる。特に、開発、ステージング、本番といった複数の環境を扱う場合、その管理の複雑さは増大しがちである。今回紹介するニュース記事は、MyCoCoという企業が直面したこの課題と、それをどのように解決したかについて解説する。
MyCoCo社は当初、システムのインフラ設定を管理するために「Terraform(テラフォーム)」というツールを使っていた。Terraformは、コードを使ってサーバーやデータベースなどのインフラを構築・変更・削除できるツールであり、「Infrastructure as Code(IaC、インフラ・アズ・コード)」を実現するための主要な手段の一つである。IaCの考え方は、手動での作業によるミスを減らし、インフラの変更履歴を追跡しやすくする点で非常に優れている。
しかし、MyCoCo社は開発、ステージング、本番の三つの環境を持っていたため、それぞれに対応するTerraformの設定ファイルを「コピー&ペースト」で複製して使っていた。例えば、データベースの設定ファイルが開発環境用、ステージング環境用、本番環境用とそれぞれ別々に存在し、ファイル名も内容も非常に似ていたのだ。
このような管理方法には、深刻な問題があった。 第一に、「環境ドリフト」と呼ばれる問題が発生しやすかった。環境ドリフトとは、本来同じはずの設定が、各環境で少しずつ異なってしまう現象を指す。例えば、開発環境でだけセキュリティ設定の漏れがあったり、ステージング環境と本番環境でデータベースのバージョンが違ったりといったことが起こりうる。これは、ある環境で変更を加えた際に、他の環境への適用を忘れたり、コピーミスをしたりすることが原因で起こる。 第二に、メンテナンスに膨大な時間がかかっていた。MyCoCo社のエンジニアは、一つのインフラ変更を行うたびに、三つの環境それぞれで設定ファイルを更新し、それぞれでコードレビューを受け、それぞれでTerraformの適用コマンドを実行する必要があった。この作業は週に20時間以上もかかり、重大なセキュリティパッチの適用が30分で終わるはずが2日もかかってしまう事態も発生していた。
これはまるで、同じ建物を設計するのに、各フロアごとに設計図をコピーして修正していたようなものである。少しの変更でも全フロアの設計図を注意深く見直す必要があり、非常に手間がかかる上に、どこかで間違いが生じる可能性が高かった。
MyCoCo社はこの状況を改善するため、Terraformの二つの強力な機能、「ワークスペース(Workspaces)」と「モジュール(Modules)」の導入を決断した。これにより、「DRY(Don't Repeat Yourself)」原則、つまり「繰り返しを避ける」というソフトウェア開発の基本的な考え方をインフラ管理にも適用することを目指した。
ワークスペースとは、簡単に言えば、同じTerraformのコードベース(設定ファイルの集まり)を使いながら、複数の独立した「作業領域」を作成できる機能である。まるで一つの設計図から、開発用、ステージング用、本番用と、それぞれ異なる建物(環境)を建てるようなイメージだ。
MyCoCo社はdev、staging、productionというワークスペースを作成した。これにより、一つのmain.tfファイルで全環境の設定を記述できるようになる。terraform workspace select productionというコマンドを実行すれば本番環境用の作業領域に切り替わり、その状態でTerraformを適用すれば本番環境に変更が加えられる。重要な点として、各ワークスペースは自身の「ステートファイル」を独立して管理する。ステートファイルはTerraformが管理しているインフラの状態を記録するものであり、これが分離されていることで、開発環境での誤操作が本番環境に影響を与えるリスクを防ぐことができる。これは、異なる設計図を使うのではなく、同じ設計図に「開発モード」「本番モード」という切り替えスイッチがあるようなものと言える。
次に、モジュールとは、共通のインフラ構成を「部品化」して再利用可能にする仕組みである。例えば、データベース(RDS)を構築する際には、インスタンスの種類、ストレージ容量、バックアップ設定など、多くの設定が必要となる。これらの設定は環境によって少しずつ異なるが、基本的な構造は同じである。モジュールを使うことで、この共通部分を一つのまとまり(例: modules/rdsディレクトリ)として定義し、それを各環境で「呼び出して」使うことができる。
MyCoCo社は、データベース(RDS)の設定をモジュール化した。このモジュールは、データベース名、エンジン、インスタンスタイプ、ストレージ容量などの設定値を「変数」として受け取るように設計されている。
ワークスペースとモジュールを組み合わせることで、MyCoCo社は劇的な変化を遂げた。
彼らのmain.tfファイルでは、terraform.workspaceという特別な変数が利用された。この変数は、現在選択されているワークスペース名(例: dev、staging、production)を教えてくれる。この変数を使って、例えば開発環境であれば小さなデータベースインスタンスを、本番環境であれば高性能なインスタンスを、同じコード内で動的に切り替えることができるようになった。
具体的には、localsブロックという機能を使って、ワークスペース名に応じた設定値のセット(例: devワークスペースならインスタンスタイプはdb.t3.micro、productionならdb.t3.largeなど)を定義し、それをモジュールに渡すことで、環境ごとの差異を吸収した。
さらに、環境ごとにさらに細かい設定(例: データベースのリージョン、監視機能の有効化など)が必要な場合は、envs/dev.tfvarsやenvs/production.tfvarsといった専用の変数ファイルを用意し、terraform apply -var-file="envs/$(terraform workspace show).tfvars"のように、現在のワークスペース名に対応する変数ファイルを自動で読み込むようにした。これにより、設定の重複を徹底的に排除し、一つのコードベースで全ての環境を管理できるようになったのである。
この取り組みの結果、MyCoCo社は以下のような大きな効果を得た。
まず、インフラのメンテナンスにかかる時間を70%も削減できた。一つの変更が全ての環境に反映されるため、個別のファイルを修正する手間がなくなったのだ。
次に、環境ドリフトが完全に解消された。全ての環境が同じコードとモジュールを使用しているため、意図しない設定の差異が発生する余地がなくなった。異なるのは、ワークスペース固有の変数ファイルで定義された値だけである。
そして、新しい環境の構築が劇的に高速化された。災害復旧用の新しい環境が必要になった際、以前なら何日もかかった作業が、terraform workspace new dr-east && terraform applyというコマンドを実行するだけで数時間で完了するようになった。
また、セキュリティ面でも利点があった。各ワークスペースが独立したステートファイルを持つため、開発環境での作業中に誤って本番環境の設定を変更してしまうようなリスクがなくなったのである。
システムエンジニアを目指す皆さんへのアドバイスとして、まずTerraformで複数の環境を管理する必要が出てきたら、「ワークスペース」から使い始めることを強く推奨する。その後、繰り返し現れる共通のパターンを「モジュール」として切り出し、コードの再利用性を高めていくのが良いアプローチである。terraform.workspace変数を活用することで、一つのコードベースで様々な環境の要求に応えることができるようになる。
Terraformのワークスペースとモジュールを適切に組み合わせることで、インフラ管理の複雑さは劇的に軽減され、エンジニアはより生産的で、ストレスの少ない開発体験を得ることができるだろう。これは、単に技術的な問題の解決にとどまらず、チーム全体の効率と幸福度を高める重要な一歩となる。