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Vault(ヴォルト)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

Vault(ヴォルト)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

ヴォルト (ヴォルト)

英語表記

Vault (ヴォールト)

用語解説

Vaultは、HashiCorp社が開発・提供する、機密情報を安全に管理するためのツールである。現代の複雑なITシステムにおいては、アプリケーションがデータベースに接続するための認証情報、外部サービスと連携するためのAPIキー、ユーザー認証に使われるトークン、システム間の通信を保護するSSL/TLS証明書、暗号化に用いられる秘密鍵など、数多くの機密情報が存在する。これらの機密情報は、システムが正しく機能するために不可欠である一方、もし漏洩すれば、データ侵害、不正アクセス、システムの乗っ取りといった深刻なセキュリティインシデントに直結する。Vaultは、これらの機密情報を一元的に安全に保存し、必要なときにのみ払い出し、そのアクセスを厳密に制御・監視することで、組織全体のセキュリティ体制を強化することを目的としている。具体的には、機密情報の保存、動的な生成、暗号化、アクセス制御、監査ログの記録といった主要な機能を提供する。これにより、開発者や運用担当者は機密情報をコードや設定ファイルに直接埋め込むリスクを避け、セキュアなシステム構築と運用が可能となる。

Vaultの機能は多岐にわたるが、その核心は機密情報のライフサイクル管理と保護にある。まず、Vaultは「Secure Secret Storage(安全な機密情報ストレージ)」として機能する。これは、データベースの認証情報やAPIキー、秘密鍵といった静的な機密情報を、Vaultの永続ストレージ(ファイルシステム、クラウドストレージ、データベースなど)に暗号化して保存する機能である。Vaultに保存されるデータはすべて暗号化されるため、ストレージが不正にアクセスされたとしても、平文の機密情報が漏洩するリスクを低減できる。次に、「Dynamic Secrets(動的な機密情報)」の生成機能がある。これは、例えばデータベースに接続する際やクラウドプロバイダーのAPIを使用する際に、Vaultがその場で一時的な認証情報を動的に生成し、アプリケーションに払い出す機能である。この認証情報は、特定の有効期間(リース期間)が設定され、期間が過ぎると自動的に無効化される。これにより、長期間有効な認証情報がシステム内に存在することを避け、万が一流出した場合でも被害を最小限に抑えることが可能になる。

さらに、Vaultは「Data Encryption as a Service(暗号化サービス)」としても利用できる。アプリケーションは、VaultのAPIを通じて直接データを暗号化・復号化できるが、その際に使用される暗号鍵はVaultが安全に管理する。これにより、アプリケーション開発者は複雑な暗号化ロジックや鍵管理について深く意識することなく、機密性の高いデータを保護できる。また、Vaultから払い出されるほとんどの機密情報には「Leasing and Renewal(リースと更新)」という概念が適用される。これは、前述の動的シークレットと同様に、払い出された機密情報には有効期間が設定されており、利用者はその期間内に更新することで継続して利用できるという仕組みである。有効期間が過ぎると、その機密情報は自動的に無効化されるため、不要になった機密情報がシステム内に残り続けるリスクを防ぐ。緊急時には「Revocation(失効)」機能を用いて、特定の機密情報や、それに関連するすべての機密情報を手動または条件に基づいて即座に無効化することも可能であり、迅速なインシデント対応に貢献する。

Vaultのセキュリティとコンプライアンスを支える重要な機能に「Audit Logging(監査ログ)」がある。Vaultへのすべてのアクセス、認証、機密情報の読み書き、設定変更など、あらゆる操作が詳細に記録される。この監査ログは、誰が、いつ、何を、どのように行ったのかを追跡することを可能にし、セキュリティ監査やコンプライアンス要件への対応に不可欠な証拠を提供する。そして、機密情報へのアクセスを制御する基盤となるのが「Authentication and Authorization(認証と認可)」の仕組みである。Vaultは、Kubernetes、AWS IAM、Azure AD、GCP、GitHub、LDAPなど、多様な認証方法をサポートしている。これにより、様々な環境で動作するアプリケーションや、人間のユーザーが安全にVaultに認証できる。認証されたユーザーやアプリケーションは、事前に定義された「ポリシー」に基づいて、どの機密情報にアクセスできるか、どのような操作が許可されるかが厳密に決定される。このポリシーベースのアクセス制御により、最小権限の原則を適用し、不必要な機密情報へのアクセスを排除することが可能となる。

Vaultの運用面における特徴として、「Seal/Unseal」の概念が挙げられる。Vaultサーバーは起動時に「Sealed(封印状態)」となり、この状態では保存されている機密情報には一切アクセスできない。機密情報にアクセスするためには、Vaultを「Unseal(開封)」する必要がある。Unsealプロセスでは、Vaultのマスターキーがシャミアの秘密分散アルゴリズムによって複数の「キーシェア」に分割されており、これらのキーシェアの一定数(例えば5つのうち3つ)を異なる管理者たちが持ち寄り、入力することで初めてUnsealされる。この仕組みにより、仮にVaultサーバーが物理的に盗まれたとしても、複数の管理者からキーシェアが集まらない限り、機密情報が漏洩するリスクを大幅に低減できる。これは、Vaultが提供する多層防御戦略の一つであり、機密情報の堅牢な保護を実現している。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、Vaultは単なるパスワードマネージャー以上の存在であることを理解することが重要である。それは、現代のクラウドネイティブな環境やマイクロサービスアーキテクチャにおいて、自動化されたデプロイメントパイプラインやコンテナ環境で機密情報を安全に扱うためのデファクトスタンダードともいえるツールである。Vaultを導入することで、機密情報の管理に関わる手動作業を減らし、セキュリティリスクを大幅に軽減しながら、開発の俊敏性を維持することが可能となる。その結果、組織はセキュリティ体制を強化し、コンプライアンス要件を満たしつつ、より堅牢で信頼性の高いシステムを構築できるようになる。

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