【ITニュース解説】#DAY 10: Retrospective & Tuning
2025年09月17日に「Dev.to」が公開したITニュース「#DAY 10: Retrospective & Tuning」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
システム構築では、振り返りと改善が重要だ。学んだ知識を統合し、データ最適化、堅牢性確保、文書化を行う。正常なシステム動作を把握し、異常を検知する基盤を確立する。インフラ設定やツール活用、継続的な改善が求められる。これらは、システムの準備から運用改善まで、一連のエンジニアリングプロセス習得につながる。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す初心者にとって、開発やシステム構築後の振り返りと改善は非常に重要なプロセスだ。今回の記事で紹介されている「DFIR Lab Challenge」の「Day 10」は、まさにその振り返りと改善に焦点を当てている。デジタルフォレンジックとインシデントレスポンス(DFIR)というセキュリティ分野でのラボ環境構築を通じて、これまでに学んだ知識や技術を統合し、行ったエンジニアリング上の選択を見直し、さらなる改善点を探る作業がこの日に行われた。目的は、データを収集し分析する「データパイプライン」の最適化、セキュリティ上の脅威を検出する「検出基準」の微調整、そして構築したラボ環境が将来にわたって拡張可能で安定して動作する「スケーラブルで堅牢」なものであることを確認することだった。一歩引いて全体を見渡し、これまでの進捗を評価し、未来の計画を立てることで、単なる練習用の設定だったラボが、継続的な学習のための強固な基盤へと生まれ変わったのだ。
ここで言う「レトロスペクティブ」とは、これまでの作業を振り返り、何がうまくいき、どのような課題があり、どこを改善できるかを特定するプロセスを指す。これはシステム開発における「反省会」のようなものと考えるとわかりやすいかもしれない。一方「チューニング」とは、設定や作業手順、プロセスなどを調整し、パフォーマンスを最大限に引き出し、当初の目標に合致させることを意味する。例えば、車のエンジンを微調整して燃費や出力を向上させるようなイメージだ。そして「知識とエンジニアリングの統合と未来への適用」とは、これまでに培った専門知識と技術力を結びつけ、革新的な経験を取り入れながら、長期的成長と成功を促進する持続可能で柔軟性のあるシステムを構築していくことだ。
今回のセッションの具体的な目的は三つあった。一つは、通常のシステム動作の「ベースライン」を確立すること。これは、システムが普段どのような動きをしているかを把握しておくことで、異常な動きがあった際にすぐに気づけるようにするためだ。二つ目は、重要な発見や学んだことを正式な形で文書化すること。そして三つ目は、構築したラボのアーキテクチャ、つまりシステムの全体設計を記録しておくことで、将来的に異常な挙動を検出しやすくすることだった。
特に文書化は、システムエンジニアにとって非常に重要な作業だ。この記事では、このラボ環境の「取扱説明書」、つまり「SOCランブック」を作成したことの意義が強調されている。なぜ文書化が必要かというと、まずシステムをゼロから再構築する際に迷わず効率的に作業を進められるようになる。次に、新しいチームメンバーが加わったときに、スムーズにシステムの使い方や設定方法を教えることができる。そして、半年後や一年後に自分が何をどう設定したのかを思い出す手助けにもなるのだ。
作成された「ワンページチートシート」には、Splunkというセキュリティ情報イベント管理(SIEM)ツールのクラウド版やオンプレミス版のURL、システムからログを転送するための「Universal Forwarder」というソフトウェアのインストールコマンドや設定コマンド、そしてログの転送に必要なファイアウォールのポート設定、さらには特定の脅威(例えばブルートフォース攻撃)を検出するための重要な検索クエリなどが記載された。これらは、日々の運用やトラブルシューティングにおいて、すぐに参照できる貴重な情報となる。
さらに、一度行った調査で効果的だった検索クエリや設定は、単発で終わらせずに再利用できる「レポート」や「アラート」として保存することが推奨されている。これは、一度見つけた「賢い」発見をパッケージ化し、チーム全体の「知性」として蓄積していく作業だ。強力な検索クエリは、レポートとして保存することで、後から誰もがワンクリックで実行できるようになり、今後の調査時間を大幅に短縮できる。
そして、異常検出の土台となるのが「正常な状態」のベースライン化だ。システムが普段どのような動きをしているのかを知らなければ、何が異常なのかを判断することはできない。記事では、システム上で最も頻繁に発生するプロセスイベントを検索する例が示されている。例えば、Windowsのセキュリティログにおいて、ユーザーのログイン成功を示すイベントコードや、ログオフを示すイベントコードは通常非常に多く発生する。これらの「正常な」イベントの数を把握しておくことで、ログイン失敗のイベントコードが急増したり、普段はほとんど発生しない珍しいイベントコードが出現したりしたときに、それを「異常な活動」として迅速に特定できるようになるのだ。
今回の経験から得られた教訓は、技術的な側面と、システムエンジニアとしての考え方(マインドセット)の両面にわたる。技術的な教訓としては、まず「インフラストラクチャの重要性」が挙げられている。ログを収集・転送するためのフォワーダー、ネットワークの通信を制御するファイアウォール、そしてポートの設定といった基盤部分が正しく構成されていることが、分析作業以上に重要で、最も困難な部分だったという。データが正確かつ安定して流れる「データパイプライン」が堅牢でなければ、その後のどんな高度な分析も意味をなさない。次に「SPL(Splunk Processing Language)はスーパーパワー」という点だ。Splunkの検索言語を習得することで、大量の生データから必要な情報を抽出し、集計し、分析するという一連の作業を効率的に行い、「インテリジェンス」へと変換できるようになった。そして「コンテキストがすべて」という教訓だ。例えば、Windowsのイベントログにおける特定のイベントID(ログイン成功や失敗など)が何を意味するのかを理解していなければ、ログは単なる数字の羅列に過ぎない。ログの背景にある意味や状況を理解することが、脅威を探索する「脅威ハンティング」には不可欠となる。
マインドセットの変化としては、まず「受動的」な対応から「能動的」なアプローチへの移行があった。「何が起こったのか?」と過去を振り返るだけでなく、「何が起こっているのか?」そして「何が起こりうるのか?」と未来を予測し、アラート設定やベースライン化を通じて積極的に監視する意識が芽生えた。また、「コマンドラインインターフェース(CLI)を受け入れる」という変化も大きい。普段GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)に慣れている初心者には難しく感じられるかもしれないが、実際のシステム管理やトラブルシューティングでは、ターミナルを使ったコマンド操作が非常に多く発生する。これにより、より深くシステムを制御し、効率的に作業を進める能力が向上した。最後に「ラボは生きているシステムである」という認識だ。システムは一度構築したら終わりではなく、アラートの閾値を調整したり、新しいデータソースを追加したりと、継続的な「チューニング」と改善が必要な「生き物」であるという考え方だ。これは、運用フェーズに入ったシステムを扱う上で、システムエンジニアが持つべき重要な視点である。
今回の経験を踏まえ、著者は今後の改善計画として三つの目標を立てている。一つ目は「ネットワークデータの取り込み」だ。現在のホストベースのイベント(OSやアプリケーションのログ)に加えて、ファイアウォールやZeek(Bro)のようなネットワーク監視ツールからのログを取り込むことで、システム全体の状況をより包括的に把握し、ホストとネットワークの両面から脅威を検出できるようになる。二つ目は「カスタムアラートの構築」だ。既成の検索クエリを使うだけでなく、自分のラボ環境に特有の、具体的な脅威(例えば、特定の不正ツールのコマンド実行など)を検出するための独自のアラートを作成することを目指す。これは、より高度なセキュリティ対策につながる。三つ目は「インシデントレスポンスの練習」だ。実際にシステムが侵害されたというシナリオを想定し、検出から封じ込め、復旧、事後分析に至るまでの「インシデントレスポンスライフサイクル」全体を、構築したSplunkラボを使ってシミュレーションする練習を行う。これにより、緊急事態発生時の対応能力を実践的に高めることができる。
この10日間の学習は、単にSplunkという特定のツールを学ぶだけにとどまらなかった。それは、セキュリティアナリスト、ひいてはシステムエンジニアとして不可欠な「準備」「ツールの習得」「調査」「文書化」「継続的な改善」という一連の手法を構築するプロセスだった。単にソフトウェアをインストールするだけでなく、実際にプロフェッショナルなレベルの練習環境を自らの手で作り上げることができたのだ。この経験は、システムを設計・構築・運用するすべてのエンジニアにとって、日々の業務における振り返り、改善、そして持続的な学習がいかに重要であるかを教えてくれるだろう。