【ITニュース解説】GraphRAG with Wikipedia and GPT OSS
2025年09月18日に「Dev.to」が公開したITニュース「GraphRAG with Wikipedia and GPT OSS」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
GraphRAGは、AIが質問に答える際、データのつながりをグラフで探し、得られた情報を元に正確な回答を生成する技術だ。txtaiフレームワークを使い、Wikipediaから関連情報をグラフクエリで抽出し、それをGPT-OSSで分析・要約する。これは、単なるキーワード検索より深い関連性を見つけるのに役立つ。
ITニュース解説
今日のIT分野では、AI(人工知能)技術の進化が目覚ましく、特に大規模言語モデル(LLM)は人間のような自然な文章生成や質問応答能力で注目されている。しかし、LLMには最新情報や専門知識の不足、また事実と異なる情報を生成する「ハルシネーション」といった課題がある。ハルシネーションとは、LLMが事実に基づかない、あたかも真実かのような情報を自信満々に生成してしまう現象を指す。これらの課題を解決し、LLMの能力を最大限に引き出すための重要な技術が「RAG(Retrieval Augmented Generation)」である。
RAGは「検索拡張生成」と訳され、LLMが質問に答える際に、外部の情報を検索し、その情報を参考にしながら回答を生成する手法だ。具体的には、ユーザーが質問をすると、まずその質問に関連する情報をデータベースなどから探し出す。この探し出された「関連情報(コンテキスト)」をLLMに与え、それに基づいてLLMが正確で信頼性の高い回答を作り出す。これにより、LLMは常に最新の情報や特定の知識を参照できるようになり、ハルシネーションのリスクも減らせる。一般的に、この情報検索には、言葉の意味を数値で表現した「ベクトル」として情報を保存し、質問のベクトルと意味的に近い情報を効率よく探し出す「ベクトルデータベース」が使われることが多い。しかし、RAGのコンテキスト取得方法はベクトルデータベースに限らず、Webサイトの検索や従来のテキスト検索など、様々な方法が考えられる。
今回紹介するGraphRAGは、RAGの中でも特に強力な手法の一つだ。GraphRAGは、コンテキストを「グラフ」の形で取得するRAGの一種である。グラフとは、点(ノード)と点をつなぐ線(エッジ)で構成される、情報の関係性を視覚的に表現するデータ構造のことだ。例えば、Webサイトのページがノードで、リンクがエッジといった具合である。このニュース記事では、txtaiというAIフレームワークを使い、WikipediaのデータとオープンソースのGPTモデルを組み合わせて、GraphRAGの具体的な利用例が示されている。txtaiは、セマンティック検索やLLMの連携、言語モデルのワークフローを一つにまとめた便利なフレームワークだ。
txtaiには、データをグラフとして扱う機能が組み込まれており、埋め込みデータベースに保存されたデータから自動的にグラフネットワークを生成する。埋め込みデータベースとは、テキストなどの情報をAIが理解しやすい数値のベクトル形式に変換(埋め込み)して保存するデータベースのことだ。この事例では、「txtai-wikipedia-slim」という、最も閲覧数の多い10万件のWikipedia記事をまとめた埋め込みデータベースが利用された。このデータベースには、記事の意味的な類似性を示すベクトルインデックスだけでなく、記事間の関連性を示すグラフネットワークも含まれている。
このグラフネットワークを活用することで、特定のトピックに関する情報を深く掘り下げることが可能になる。例えば、「ChatGPT」と「Anthropic」という二つのキーワードがあったとする。これらの個別の情報だけでなく、両者の間にどのような関連性があるのかを知りたい場合がある。GraphRAGでは、openCypherというグラフデータベース向けのクエリ言語を使って、この関連性を効率的に探索できる。openCypherは、グラフ内のノードやエッジの関係性を記述し、特定のパターンを見つけ出すための専門的な言語だ。
記事の例では、openCypherを使って「ChatGPT」に似たノードと「Anthropic」に似たノードの間にあるパス(関連経路)を探すクエリが実行された。これは、単に「ChatGPT」と「Anthropic」それぞれの情報を個別に検索するよりも、はるかに強力な手法である。二つの概念がどのように結びついているか、間にどのような記事を介して関連があるか、といった「関係性」そのものを発見できるからだ。このような探索は「ディープグラフ検索」と呼ばれ、複雑な情報の中から意味のあるつながりを発見する上で非常に有効である。
グラフクエリによって得られた情報は、単なるテキストの羅列ではなく、ChatGPT、GPT-4、OpenAI、Anthropic、Claude、Geminiといった主要なAI関連のエンティティと、それらの間の関係性が構造化された形で含まれている。この構造化されたデータは、図として視覚化することも可能だ。記事では、matplotlibやnetworkxといったライブラリを使って、これらのAI技術がどのように相互に関連しているかを示すグラフが描画されている。ノードの色や大きさで、それぞれのAIモデルがどの企業に属するかを示すなど、一目で関係性がわかるように工夫されている。
さらに、このグラフから得られた情報、例えばノードID、URL、記事本文、関連リンクなどは、テキスト形式で詳細に抽出される。例えば、「ChatGPT」というノードであれば、その定義、開発元、登場時期、特徴、そして関連する他のAIモデルや企業へのリンクが一覧として得られる。このようにして整理された情報が、最終的にLLMに渡される「コンテキスト」となるのだ。
最終段階では、この豊富で構造化されたグラフコンテキストが、LLMのプロンプト(指示文)に組み込まれる。ニュース記事の例では、txtaiのLLMコンポーネントがオープンソースのGPTモデル(unsloth/gpt-oss-20b-GGUF)を使って、与えられたコンテキストに基づいて「ChatGPT、GPT-4、そして次世代生成AI:革新と影響のタイムライン」と題する記事を生成した。
LLMは、提供されたグラフコンテキストを分析し、生成AIの歴史、OpenAIのGPTシリーズの進化(GPT-3からGPT-4.5まで)、Google DeepMindのGemini、AnthropicのClaudeといった主要な競合モデル、ChatGPTがもたらした画期的な機能(Web検索、アプリ連携、プログラム実行など)、そして生成AIが社会に与える影響と懸念点(人間の知能の代替、剽窃、誤情報拡散)、さらに今後の展望に至るまで、多角的な視点から詳細な記事を作成する。この生成された記事は、単に事実を並べるだけでなく、関連する企業や技術がどのように競争し、連携してきたかという深いつながりまでをも考慮に入れている。これは、グラフ構造によって提供された豊かなコンテキストがあったからこそ可能となる。
GraphRAGは、LLMがより正確で、より深い洞察に満ちた情報を提供するための強力な手法だと言える。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、RAGやGraphRAGのような技術は、LLMを活用した次世代のアプリケーション開発において不可欠な知識となるだろう。情報を単に検索するだけでなく、その「関係性」を理解し、活用することで、AIはこれまで以上に賢く、有用なツールへと進化していく。この技術は、複雑な情報の中から意味のあるつながりを見つけ出し、より質の高い情報生成を可能にする。