【ITニュース解説】Your Logs Contain Secrets: Why We Built a Zero-Knowledge Log Platform

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Your Logs Contain Secrets: Why We Built a Zero-Knowledge Log Platform」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

開発ログにはパスワード等の機密情報が意図せず記録されやすい。従来のログ管理サービスは提供者が内容を閲覧でき、漏洩リスクがある。この対策として、送信前にログを暗号化し、利用者だけが持つ鍵で解読するゼロ知識ログという仕組みが開発された。

ITニュース解説

システム開発において、プログラムがどのように動作したかを記録する「ログ」は、問題発生時の原因調査やシステムの監視に不可欠なものである。しかし、このログには、開発者が意 tribulationsしない形で極めて重要な機密情報が記録されてしまうという、根深い問題が存在する。例えば、デバッグのために一時的にプログラムの内部情報を全て出力する処理を書いた結果、ユーザーの個人情報やパスワード、サービスの認証に必要なAPIキーなどがログにそのまま残ってしまうことがある。エラーが発生した際に、データベースへの接続情報といったシステムの根幹に関わる情報が記録されるケースも少なくない。これらは開発現場で頻繁に起こりうる、しかし見過ごされがちな重大なリスクである。

多くのシステムでは、出力されたログを専門のログ管理サービスに集約して分析や保管を行う。ここで問題となるのは、これらのサービスがログを「平文」、つまり暗号化されていない誰もが読める形式で保存している点である。これは、サービス提供会社の従業員がその気になれば顧客のログを閲覧できることを意味する。さらに、もしサービス提供会社がサイバー攻撃を受ければ、そこに保管されている全ての企業のログデータが、攻撃者の手に渡ってしまう危険性がある。実際に、過去には大手企業がログへの不正アクセスをきっかけに、顧客情報やソースコードが流出するという深刻なセキュリティインシデントも発生しており、これは決して仮説上の脅威ではない。

この問題に対処するため、従来はいくつかの対策が取られてきた。代表的なのは、ログの中から「パスワード」や「APIキー」といった特定の文字列を検出し、別の文字列に置き換える「マスキング」と呼ばれる手法だ。しかし、この方法は開発者が新しい機密情報を追加するたびにマスキングのルールを更新しなくてはならず、更新漏れや想定外の命名規則によって、機密情報がすり抜けてしまうことが多い。また、サービス提供会社のセキュリティ体制を信頼するというアプローチもあるが、それは自社のセキュリティを他者に依存するものであり、根本的な解決策とは言えない。結局のところ、これらの対策は対症療法に過ぎず、人為的ミスや未知の脅威の前では脆弱であった。

こうした従来の手法の限界を克服するために、「ゼロ知識ロギング」という新しいアプローチが登場した。この考え方の核心は、ログ管理サービスを提供する側ですら、預かっているログの中身を一切読み取れないようにするという点にある。これは運用ルールや信頼関係によって担保されるのではなく、「暗号化」という数学的な技術によって物理的に不可能にする。具体的には、アプリケーションがログを生成した後、それをログ管理サービスに送信する直前に、開発者の管理下にある環境でログ全体を暗号化する。暗号化されたデータは、それに対応する「鍵」がなければ元の意味のある情報に戻すことはできない。そして、その最も重要な鍵は開発者自身だけが保管・管理し、ログ管理サービスには決して渡さない。その結果、サービス提供者が扱うのは、鍵なしでは解読不可能な、単なる意味のない文字列の羅列となる。万が一、この暗号化されたログデータが外部に漏洩したとしても、中身が解読されることはないため、機密情報が守られる。開発者は、ログを確認したい時だけ、手元で管理している鍵を使って暗号化されたログを元の状態に戻す「復号」という作業を行うことで、安全に内容を閲覧できる。

このゼロ知識ロギングは、セキュリティを飛躍的に向上させるだけでなく、現代のビジネスに求められるコンプライアンス要件への対応を容易にするという大きな利点ももたらす。例えば、EUのGDPR(一般データ保護規則)には、ユーザーから要求された際にその個人情報を完全に消去する「忘れられる権利」が定められている。従来のログシステムでは、バックアップを含め、あらゆる場所に散らばった特定のユーザーのログを探し出して削除する必要があり、これは非常に困難な作業であった。しかし、ゼロ知識ロギングでは、そのユーザーのデータに関連付けられた暗号鍵を削除するだけでよい。鍵が失われれば、対応するログは永久に復号不可能となり、実質的にデータが消去されたのと同じ状態になる。これは「暗号論的削除」と呼ばれ、コンプライアンス対応を劇的に簡素化する。また、データの保管場所に関する規制、いわゆるデータレジデンシーの問題にも柔軟に対応できる。データそのものは暗号化されていて中身が保護されているため、物理的にどの国のサーバーに保管されてもリスクは低く、重要なのは鍵をどの国で管理するかという点になる。

結論として、ゼロ知識ロギングは、システム開発において人為的なミスは起こりうるものであり、外部からの脅威は常に存在するという現実を受け入れた上で、データを本質的に保護するための次世代の技術である。このアプローチを採用することで、仮にログデータそのものが第三者の手に渡ったとしても、そこに記録されているのは解読不能な情報だけであり、企業の生命線である機密情報が漏洩するリスクを根本から排除することが可能になる。これは、単なるセキュリティ対策ではなく、データを責任を持って扱うための、これからのシステム開発における標準的な考え方となるだろう。