【ITニュース解説】How to proxy Flutter's network requests to the native layer
2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「How to proxy Flutter's network requests to the native layer」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Flutterの通信ライブラリDioを使い、ネットワーク通信処理をAndroidやiOSのネイティブコードに委任する方法。Dioの通信機能を担う部分を差し替えることで、重複するコードをなくし通信ロジックを一元管理。開発効率の向上に繋がる。(119文字)
ITニュース解説
スマートフォンアプリ開発において、iOSとAndroidの両方で動作するアプリケーションを効率的に作るためのフレームワークとしてFlutterが広く利用されている。一方で、OS固有の機能を深く利用するために、従来からあるネイティブ開発(AndroidではKotlin/Java、iOSではSwift/Objective-C)も依然として重要である。この二つの開発手法を組み合わせ、既存のネイティブアプリに新しい機能をFlutterで追加するような「ハイブリッド開発」も増えている。しかし、このハイブリッド開発には特有の課題が存在する。その一つが、ネットワーク通信処理の重複である。ネイティブ側とFlutter側でそれぞれがサーバーと通信する場合、通信エラー時の再試行処理や、ユーザーの認証情報(トークン)が古くなった際にログイン画面に戻すといった共通の処理を、ネイティブとFlutterの両方で実装する必要が生じる。これはコードの重複を招き、メンテナンス性を低下させる原因となる。また、開発中に通信内容を確認するためのデバッグツール(Charlesなど)を利用する際、Flutterで広く使われる通信ライブラリ「Dio」は、標準ではスマートフォンのプロキシ設定を認識しないため、コード内で個別に設定が必要となり手間がかかるという問題もある。
これらの課題を解決するため、Flutter側のネットワークリクエストをすべてネイティブ層に中継し、一元的に処理を任せるというアプローチが有効である。FlutterはUIの表示や、ネイティブから受け取ったデータの解釈に専念し、実際の通信はすべてネイティブ側が担当する。これにより、通信に関するロジックは一箇所に集約され、コードの重複がなくなり、デバッグも容易になる。この仕組みを実現する上で鍵となるのが、Flutterの通信ライブラリ「Dio」が持つカスタマイズ機能である。Dioは、開発者が通信処理の内部的な振る舞いを変更できるよう、柔軟な設計になっている。具体的には、Dioが実際にHTTPリクエストを送受信する部分を担っている「HttpClientAdapter」という部品を、自作のものに差し替えることが可能である。標準のHttpClientAdapterは、Flutterが動作するDart言語の機能を使って通信を行うが、これを独自に実装することで、通信処理を全く別の方法に置き換えることができる。
具体的な実装方法は、まずHttpClientAdapterの役割を担うカスタムクラスを作成することから始まる。このクラス内で、通信処理の核となる「fetch」というメソッドを上書きする。本来このメソッドはサーバーへリクエストを送信する処理を記述するが、ここではサーバーへの直接通信は行わない。その代わりに、Flutterとネイティブコード間でデータをやり取りするための公式な仕組みである「メソッドチャンネル」を利用する。メソッドチャンネルは、Flutterの世界とネイティブの世界を繋ぐ連絡通路のような役割を果たす。上書きしたfetchメソッドの中で、リクエストのURL、HTTPメソッド、パラメータといった情報をこのメソッドチャンネルを通じてネイティブ側に送信する。
ネイティブ側(AndroidやiOSのコード)では、Flutterからメソッドチャンネル経由で送られてきたリクエスト情報を受け取る。そして、OkHttpなど、そのプラットフォームで標準的に使われているネットワークライブラリを用いて、実際にサーバーとの通信を実行する。サーバーからレスポンスを受け取ったら、その結果(ステータスコードやレスポンスボディのデータ)を、再びメソッドチャンネルを使ってFlutter側へ返却する。Flutter側では、作成したカスタムクラスがネイティブからの応答を待ち受け、受け取ったデータをDioが扱える形式のオブジェクトに変換して処理フローに戻す。また、サーバーから返されるJSON形式のデータをFlutterのアプリケーション内で扱いやすいデータ構造に変換するために、「Transformer」という別の部品もカスタマイズする。これにより、ネイティブから返された生の文字列データを適切に解釈し、アプリケーションロジックに渡すことができる。
このように、DioのHttpClientAdapterとTransformerを独自のものに差し替えることで、Flutterのコード上では通常通りDioを使っているように見えながら、その裏側ではすべての通信処理がネイティブ層で実行されるという仕組みを構築できる。このアプローチは、ハイブリッド開発におけるネットワーク処理の一元化を実現し、コードの保守性や開発効率を大幅に向上させるための、非常に実践的な解決策であると言える。