【ITニュース解説】Your AI agent can't tell who said what. Here is a small fix: signatures, a public log and MCP
2026年10月27日に「Dev.to」が公開したITニュース「Your AI agent can't tell who said what. Here is a small fix: signatures, a public log and MCP」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
AIが情報の信頼性を確認できない問題を解決するため、humancollabは「誰が言ったか」を電子署名で、内容の改ざんや書き換えを公開ログで検証可能にするシステムを提案。AIが信頼できる情報に基づき行動できるよう支援する。
ITニュース解説
AI(人工知能)が社会に深く浸透する中で、AIがインターネット上の情報をどこまで信頼して良いかという課題が顕在化している。AIエージェントは、ある企業の情報、個人の回答、プラットフォームの規約など、事実の真偽を自分で確認できないまま行動することが多い。インターネット上の情報の多くはマーケティング目的やAIによって生成されており、その信頼性を判断することは難しい状況だ。また、評判スコアも操作されうるため、真偽の判断基準が強く求められている。
こうした課題に対し、「humancollab(ヒューマンコラボ)」という新しい仕組みが提案されている。これは、「これは本当か?」という広範な問いではなく、「誰がそれを言ったか?」「その内容が変わっていないか?」「その記録は書き換えられていないか?」という三つの具体的な問いを、機械的に検証できるプロトコルだ。
まず「誰が言ったか」については、全ての情報に「署名」が付けられる。この署名は、特定のデジタルキーと結びつき、そのキーはさらにウェブサイトのドメインや特定のデバイスに紐付けられる。これにより、情報の発信元と責任の所在が明確になる。署名があるからといって、その情報の内容が真実だと保証されるわけではないが、署名者がその情報に対する説明責任を負うため、読み手(人間もAIも)はその情報の信頼性を判断する上で重要な手がかりを得られる。
次に「内容が変わっていないか」という問いに対しては、署名がその情報の正確なバイト列、つまりデータ全体をカバーしている。情報が少しでも改ざんされれば署名が無効となるため、不正な変更を検知できる仕組みだ。
そして「記録が書き換えられていないか」を保証するため、全ての署名付き情報は「公開された追記専用ログ」に記録される。このログは一度書き込まれた内容を変更・削除できず、新しい情報が追加されるだけの仕組みであり、誰でもこのログを監査できるため、透明性が非常に高い。
この仕組みでは、情報に署名する主体として主に三種類が存在する。一つは「企業」だ。企業は、自社のドメインをDNS(インターネット上の住所録のようなもの)の特別なレコードで証明し、デジタル署名キーを使って自社のプロフィール情報(例えば、会社の能力や認定情報など)に署名する。プロフィールの過去のバージョンも全て公開され、訂正履歴も残るようになっている。
二つ目は「個人」だ。個人は、AIからの質問への回答に、パスキー(生体認証などで安全に認証できる仕組み)を使って署名する。この署名には、一度しか使えない特殊な値が含まれており、回答自体がデジタル署名される。この完全な証明書は回答と共に公開され、誰でもその回答が本当にその人によって署名されたものかを検証できる。ただし、ログには個人の特定につながる情報ではなく、回答内容の「指紋」(SHA-256ハッシュ)だけが保存され、個人のプライバシーが保護される。
三つ目は「AIエージェント」自身だ。AIエージェントもデジタル署名キーを登録し、自らの責任範囲を表明する。そして、求人を投稿したり、質問を投げかけたり、企業情報にメモを残したりといった、AIが行う全てのアクションに署名をつける。これにより、AIが行った行動も追跡可能となり、その責任の所在が明確になる。
これらの署名付き情報が記録される「ログ」は、改ざん耐性の高い技術を採用している。全ての署名付き情報は「Merkleツリー」というデータ構造に格納される。これは、各情報の「指紋」を計算し、それらを組み合わせて最終的に一つの大きな「木の根」(ルートハッシュ)を生成する仕組みだ。このルートハッシュが少しでも変わると、元データが改ざんされたことになる。このログは、ある情報がツリーに含まれていることの証明や、ログ全体が一貫していることの証明を提供する。さらに、ログのルートハッシュは、1時間ごとにビットコインのブロックチェーンにもタイムスタンプが刻まれる(OpenTimestampsという技術)。これにより、ログの内容がいつから存在し、いつ変更されていないかを、分散された信頼性の高い方法で保証する。独立した監視プログラムが常にログの状態を検証し、不正を検知する仕組みも備わっている。
また、このプロトコルの重要な特徴として、プラットフォーム自身の利用規約やプライバシーポリシーなどのルールもこの同じログに記録される。規約の全てのバージョンが公開され、その内容の「指紋」がログに封印されるため、プラットフォーム側が利用者に無断で規約をサイレントに改変することはできない。
humancollabはその透明性を徹底しており、ユーザーがこのシステム自体を信頼しなくても、その検証を自分で行えるようにしている。全ての検証用スクリプトは、一般的なプログラミング言語であるNode.jsで書かれ、特別な追加プログラムなしで動作する。誰でも公開されているコードをダウンロードし、「この情報はログに記録されているか?」や「公開されている規約は記録されたものと一致するか?」といった検証を直接実行できる。また、企業のプロフィールは、国際的な標準規格である「W3C Verifiable Credentials(検証可能な証明書)」の形式でも提供され、AIエージェントは発行者のキーさえあればオフラインでもその信頼性を検証できる。
AIエージェントがhumancollabのサービスを利用する際は、MCP(機械同士の協調プロトコル)や一般的なHTTPプロトコルを通じてサーバーと通信する。AIエージェント向けのツールとして、企業の検索や詳細情報の取得(ドメイン証明や履歴情報を含む)、質問への回答の取得(パスキーによる証明付き)、質問の投稿、求人の掲載などが用意されている。詳しい情報は機械向けのドキュメントで確認できる。
humancollabの稼働初期には、いくつかの教訓が得られた。多くの自動リクエストがあったものの、実際の利用はまだ少なかった。また、AIクローラーの自己申告名は信頼できないため、OpenAIやGoogleなどの主要なAIが公開するIPアドレス範囲からのアクセスのみを検証済みと判断している。IPアドレスは確認後すぐに破棄され、保存されることはない。また、規約の記録方法に関する重要なミスが、独立したレビューによって未然に防がれた。追記専用ログでは、情報を書き込む前の厳重な確認が重要であることが改めて示された。humancollabでは、登録されているエージェントやビジネスがまだゼロであっても、その実数をウェブサイトで公開するなど、透明性を重視している。
humancollabのチームは、AIエージェントの開発者たちに対し、もしエージェントが検証可能な事実や人間からのインプットを必要とするなら、どのようなデータ、証明、ツールがあれば、このプロトコルを積極的に利用したいと思うか、という意見を求めている。このプロトコルは著作権放棄(CC0)で公開されており、誰でも自由に利用・改良できる。フィードバックはGitHub Discussionsで受け付けている。humancollabは小規模なチームで開発されており、現在は無料で提供され、情報の可視性が販売されることはない。