【ITニュース解説】Fingerprints Are the New Cookies: Why Clearing Your Browser Data Does Nothing Anymore
2026年10月14日に「Dev.to」が公開したITニュース「Fingerprints Are the New Cookies: Why Clearing Your Browser Data Does Nothing Anymore」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
従来のCookieとは異なり、ブラウザやデバイスの設定情報からユーザーを特定する「フィンガープリント」技術が登場した。Cookie削除やシークレットモード、VPNも追跡防止には無効で、Googleもこの技術を広告に利用し始めた。プライバシー拡張機能も逆効果の場合がある。Braveなど一部ブラウザを除き、ユーザーは容易に追跡される。自身のユニーク度を把握し、エンジンレベルで保護されたブラウザの利用が有効だ。
ITニュース解説
インターネットの利用が日常の一部となっている今日、私たちはウェブサイトにアクセスするたびに、自身の情報がどのように扱われているかを意識する必要がある。これまで「クッキーを削除する」や「シークレットモード(またはプライベートブラウズ)を使用する」といった方法が、オンライン上でのプライバシー保護の基本的な習慣として推奨されてきた。しかし、最新の技術動向によると、これらの対策がもはや通用しない時代が来ている。その背景にあるのが「ブラウザフィンガープリンティング」という技術だ。
ブラウザフィンガープリンティングは、従来のクッキーとは根本的に異なる方法で私たちを識別する。クッキーがウェブサイトが私たちのブラウザに保存する小さなファイルであるのに対し、フィンガープリンティングは、私たちのデバイスやブラウザが持つ「特徴」を組み合わせて個人を特定する。ウェブサイトにアクセスする際、私たちのブラウザは、ユーザーエージェント文字列(ブラウザの種類やバージョン、OSの情報など)、画面の解像度、インストールされているフォント、タイムゾーン、使用言語、ハードウェアの同時実行性能、GPUモデルなど、数十に及ぶ小さな情報をウェブサイトに伝えている。これらの情報は、一つ一つを見れば個人を特定できるものではない。しかし、それらを組み合わせると、特定の個人、または非常に小さなグループを高い精度で識別できる「指紋」のようなものが生成されるのだ。
この指紋は、一度生成されると非常に厄介な特性を持つ。クッキーのように削除できるファイルではないため、ブラウザのキャッシュをクリアしたり、クッキーを削除したりしても、フィンガープリンティングによって生成された識別情報は消えない。なぜなら、その情報はあなたのハードウェアやソフトウェアの構成から、スクリプトが実行されるたびに再生成されるからだ。デモサイトでは、ごくわずかな情報から指紋を生成し、その識別情報がシークレットモードやVPNを使っても変わらないことを示している。プロのトラッカーはさらに高度で、いくつかの情報が変わっても識別を維持できる耐久性を持つ。これが、長年のプライバシー保護の常識を覆し、シークレットモードやクッキーの削除が「無意味」になってしまった具体的な理由である。
このような状況は、ウェブ広告業界の巨人であるGoogleの動向と密接に関わっている。2019年、Googleはプライバシー保護への意識の高まりを受け、Chromeからの第三者クッキーの段階的廃止を「プライバシーファースト」な取り組みとして発表した。しかし、その計画は遅延を重ね、2024年には第三者クッキーの完全な廃止ではなく、「新しい体験」としてユーザーに選択肢を与える方針へと変更された。その間、第三者クッキーの代替として開発された「プライバシーサンドボックス」技術は、普及に苦戦し、独占禁止法の観点からも調査対象となった。そして2025年1月、Googleの広告製品は、クッキーが機能しないコネクテッドTVなどの環境が増えていることを理由に、デバイスフィンガープリンティングへの対応を開始した。
このGoogleの方針転換は、ウェブ上のプライバシーに関する認識に大きな影響を与える。これまでウェブサイトのトップページなどで見られた「同意バナー」は、クッキーというファイルを保存すること自体ではなく、「追跡」という行為に対してユーザーの同意を得るためのものだった。しかし、フィンガープリンティングはブラウザにファイルを保存する必要がない。そのため、同意バナーが表示されることなく追跡が行われてしまう。法規制は追跡行為そのものを対象としているものの、クッキーのブロックが比較的容易に検出・実施できるのに対し、ブラウザから情報を読み取るスクリプトの検出や停止は非常に困難なのが現状だ。これは、法律に抜け穴があるのではなく、技術的な検出が追いついていないという問題である。
では、フィンガープリンティングから身を守るための対策は存在するのだろうか。多くの人が考えるのは、プライバシー保護のブラウザ拡張機能の導入だが、実はこれには落とし穴がある。フィンガープリンティングは、私たちの設定の中で「珍しい」部分を見つけて識別を行う。もし拡張機能によって一般的な情報が隠されたとしても、残った情報と、「その拡張機能を使っている人が少数派である」という事実自体が、かえってあなたを特定する要素になってしまうのだ。特定のブラウザ設定、例えばFirefoxの「フィンガープリンティング耐性」機能なども同様の問題を抱える。これらの設定を有効にすることで、一部のウェブサイトが正常に表示されなくなるだけでなく、その機能を使っているユーザーが限られた、より識別しやすい集団になってしまう。
真に有効な対策は、「エンジンレベル」、つまりブラウザそのものが、すべてのスクリプトに対して一貫して偽の情報を提供し、あなたが数千もの他のユーザーと全く同じに見えるようにすることだ。現在、このレベルの保護を提供している主なブラウザは、Brave、Tor Browser、Mullvad Browserである。Chromeユーザーは、例えるなら額にIDカードを貼って歩いているような状態だと言われる。SafariやFirefoxは、Chromeよりは優れているものの、高度なトラッカーからはまだ識別され得る中間的な位置にある。
ただし、フィンガープリンティングは「エントロピーゲーム」という側面もある。もしあなたが、ごく一般的な設定のiPhoneなど、非常に多くの人が使っているデバイスを使っている場合、あなたのフィンガープリントは他の何千もの人々と共有される可能性があり、あなた個人を特定する精度は低くなる。フィンガープリンティングによって最も特定されやすいのは、ユニークな設定をしているユーザーだ。例えば、特殊なLinuxディストリビューションを使用していたり、珍しいブラウザを使っていたり、多数のモニターを備えたハイスペックな環境で、珍しいフォントコレクションをインストールしていたりする開発者などは、その独自性ゆえに狙われやすい。いじればいじるほど、あなたはよりユニークになり、特定されやすくなる。
このような状況下で、私たちが今すぐできる具体的な行動がいくつかある。
まず、自身のブラウザのユニークネスを測定することだ。電子フロンティア財団(EFF)が提供する「coveryourtracks.eff.org」というウェブサイトにアクセスしてみよう。このサイトは、あなたのブラウザが持つ各データポイントがどれだけユニークであるかを示し、あなたの正確な設定を共有しているブラウザがどれくらい存在するかを教えてくれる。もしあなたのブラウザが「ユニークなフィンガープリントを持つ」と表示されたなら、その状況を改善する必要がある。
次に、自身の脅威モデルを正直に評価することが重要だ。もしあなたが、一般的な設定の主流ブラウザを一般的なデバイスで使っているのなら、統計的に特定されるリスクは、デモサイトが示すほど高くないかもしれない。しかし、もしあなたがカスタマイズされた開発環境を持つシステムエンジニアなら、容易に特定されると仮定すべきだ。EFFのテストは、あなたがどちらのタイプに属するかを教えてくれるため、それに応じた行動を取ることが求められる。
そして、機密性の高いウェブサイトを閲覧する際には、エンジンレベルで保護されたブラウザを一つ選んで使用することをお勧めする。すべてのブラウジングを切り替える必要はない。日常使いにはBraveを、追跡を絶対に避けたいセッションにはTor Browserを使用するといった使い分けが現実的だ。ブラウザ自体がスクリプトに見せる情報を制御するため、エンジンレベルの保護はどのような拡張機能よりも効果が高い。
最後に、これまでの「無駄な習慣」を捨てることだ。クッキーを削除したり、シークレットモードを使ったりすることは、パスワードの使い回しを防いだり、デバイスを共有する家族から履歴を隠したりするなど、他の理由では依然として良い習慣である。しかし、それらがトラッカーからあなたを隠してくれると信じるのはやめるべきだ。どのツールが何もしてくれないかを知ることは、誤った安心感を打ち破り、それ自体がプライバシー保護につながる。
この問題の根底にあるのは、フィンガープリンティングが「クールな技術」であると同時に「恐ろしいプライバシー侵害」でもあるという二面性だ。この技術は、アカウントへの不正ログインを防ぐためのボット対策など、システムを守る側でも利用されている。つまり、フィンガープリンティングはすでにウェブのインフラの一部となっており、攻撃者も防御者も利用する技術なのだ。
プライバシーの侵害は、劇的な発表によって一夜にして起こることは稀である。それは、公約、注意をそらすための施策、そして静かな方針転換という、数年間にわたる段階的なプロセスを経て進行する。それぞれの段階は、その時点では正当化できるように見え、発表にはポジティブな見出しが踊り、詳細なポリシーは「小さな文字」でこっそりと伝えられる。同意バナーの時代は、追跡される対象が目に見えるファイルであり、削除できるものだと仮定していた。しかし、フィンガープリンティングの時代は、何も保存する必要がないという前提に立つ。これまでのプライバシー保護ツールは、この新しい前提に対して再評価される必要がある。
しかし、希望が全くないわけではない。この「いたちごっこ」はまだ終わっていない。ブラウザ側では、フィンガープリンティングを困難にするために、意図的に反応を遅らせて計測を混乱させるような新機能が議論されている。また、規制当局もフィンガープリンティングを、本来であれば同意を必要とする追跡行為として扱うべきだという議論が進んでいる。ウェブの3分の2は、広告をビジネスモデルとする企業が提供するブラウザで動いている。これが構造的な問題であり、拡張機能だけで解決できるものではない。最終的な解決策は、ユーザー自身が、個人情報の把握に依存しないビジネスモデルを持つブラウザを選ぶことにあるだろう。