【ITニュース解説】Passwords Have Worked for Decades. So Why Is the whole industry switching to passkeys ?
2026年09月12日に「Medium」が公開したITニュース「Passwords Have Worked for Decades. So Why Is the whole industry switching to passkeys ?」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
パスワードは数十年間アカウントを保護してきたが、なぜIT業界全体がパスキーへの切り替えを進めているのか。この記事では、長年利用されてきたパスワードから新しい認証方式へと移行する背景と理由を解説する。
ITニュース解説
パスワードは長年、インターネット上のアカウントを守るために使われてきた認証方法だ。しかし、その有効性には限界が見え始めており、現代のサイバーセキュリティ環境では多くの課題を抱えている。そのため、業界全体でパスワードに代わる新しい認証技術への移行が進められている。
パスワードの最大の弱点の一つは、人間が記憶しなければならない点にある。ユーザーは複雑で推測されにくいパスワードを設定するよう求められるが、実際には簡単なパスワードを選んだり、複数のサービスで同じパスワードを使い回したりしがちだ。これにより、一つのサービスからパスワードが漏洩すると、他のサービスも危険にさらされる「パスワードリスト型攻撃」のリスクが高まる。また、フィッシング詐欺のような手口によって、ユーザーは偽サイトに誘導され、正規のパスワードを入力してしまい、結果的に認証情報が盗まれる被害も頻繁に発生している。さらに、ハッカーによるデータベースへの侵入によって、大量のユーザーパスワードが漏洩する事件も後を絶たない。このようなデータ漏洩が発生すると、ユーザーはパスワードの変更を余儀なくされ、多くの手間と時間を費やすことになる。パスワードは推測されるリスクだけでなく、ブルートフォースアタック(総当たり攻撃)や辞書攻撃といった機械的な試行にも弱く、複雑なパスワードを設定しても完全に安全とは言い切れない。これらの問題は、パスワードが本質的に抱えるセキュリティと利便性のトレードオフを示しており、新しい認証方式が不可欠であることを物語っている。
こうした背景から、パスワードの弱点を克服するために登場したのが「パスキー(Passkey)」と呼ばれる次世代の認証技術だ。パスキーは、FIDO(Fast IDentity Online) Allianceという団体が提唱する標準規格に基づいており、Google、Apple、Microsoftといった主要なテクノロジー企業がその普及を推進している。パスキーはパスワードとは根本的に異なる仕組みで認証を行うため、より高いセキュリティと優れたユーザー体験を提供できると期待されている。
パスキーの根幹をなす技術は「公開鍵暗号方式」だ。この方式では、対になる二つの鍵、「秘密鍵」と「公開鍵」が生成される。秘密鍵はユーザーのデバイス(スマートフォンやPCなど)内に安全に保管され、決して外部に公開されることはない。一方、公開鍵は、ユーザーが利用するオンラインサービス側に登録され、誰でも見られる状態になる。重要なのは、秘密鍵でしか作れない「署名」を、公開鍵を使って検証できるという特性だ。
パスキーを使った認証のプロセスは以下のようになる。まず、ユーザーがオンラインサービスにパスキーを「登録」する際、そのデバイス上で秘密鍵と公開鍵のペアが自動的に生成される。生成された公開鍵はサービス側に安全に送信・保存され、秘密鍵はデバイスのセキュリティチップなどの安全な領域に保存される。次に、ユーザーが「ログイン」しようとすると、サービス側はデバイスに対し、ランダムな文字列である「チャレンジ」を送信する。デバイスはこのチャレンジを秘密鍵で「署名」し、その署名をサービス側に送り返す。サービス側は、あらかじめ登録されているユーザーの公開鍵を使って、受け取った署名が正しい秘密鍵によって作成されたものかどうかを検証する。署名が正しければ、認証は成功となり、ユーザーはログインできる。この一連の流れでは、ユーザーがパスワードを入力する必要は一切なく、サービス側もパスワードを保存する必要がない。
パスキーがもたらす最大の利点は、その強固なセキュリティにある。パスキーはフィッシング詐欺に対して非常に強い耐性を持つ。なぜなら、秘密鍵は特定のウェブサイトのドメインと紐付けられて生成されるため、たとえユーザーがフィッシングサイトに誘導されたとしても、そのサイトのドメインと紐付けられた秘密鍵がない限り、認証が成功することはないからだ。また、パスワード自体が存在しないため、サービス側からパスワードが漏洩するリスクが根本的に排除される。これは、ブルートフォース攻撃や辞書攻撃といったパスワードを推測する攻撃手法に対しても有効であることを意味する。さらに、パスキーは多要素認証(MFA)の概念を内包している点も重要だ。秘密鍵の利用は、デバイスのロック解除に用いられる生体認証(指紋や顔認証)やPINコードによって保護されるため、ユーザーのデバイスを物理的に操作できなければ、他者が勝手にログインすることは非常に困難だ。
セキュリティの向上だけでなく、パスキーはユーザー体験を劇的に改善する。ユーザーはもはや複雑なパスワードを記憶したり、定期的に変更したり、あるいはメモに書き残したりする必要がなくなる。ログインプロセスは、デバイスの指紋認証や顔認証を行うだけで完了するため、非常に迅速かつシームレスだ。さらに、主要なプラットフォーム(Apple、Google、Microsoftなど)では、デバイス間でパスキーを安全に同期する仕組みが提供されている。例えば、iPhoneで作成したパスキーがiPadやMacBookにも自動的に同期され、どのデバイスからでも手軽にログインできるようになる。これにより、デバイスの機種変更や故障時にも、パスキーのリカバリーが容易になる。
パスキーは認証の未来を担う技術として大きな可能性を秘めているが、まだ普及の途上にある。全てのオンラインサービスがパスキーに対応しているわけではなく、既存のパスワードシステムからの移行には時間とコストがかかる。また、ユーザーがパスキーという新しい概念を理解し、慣れるための教育も必要となるだろう。しかし、そのセキュリティの高さと利便性を考慮すると、パスキーが将来的には現在のパスワードを完全に置き換え、インターネット上の認証の標準となる可能性は非常に高い。システムエンジニアを目指す者にとって、パスキーは今後のウェブサービスのセキュリティ設計において不可欠な知識となるだろう。