【ITニュース解説】Spring AI: How to use Generative AI and applied RAG?
2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Spring AI: How to use Generative AI and applied RAG?」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
JavaフレームワークSpring AIを使い、生成AIに外部知識を与えるRAG技術の実装方法を紹介。映画推薦を例に、Vector Databaseからユーザーの好みに合う類似映画を検索。その結果を基にAIが個人に合わせた推薦文を生成する仕組みをコード付きで解説する。(117文字)
ITニュース解説
生成AIは非常に強力なツールだが、その知識は訓練に使われたデータに限定されるという制約を持つ。つまり、学習データに含まれていない特定の文書や最新の情報については回答できない。この課題を解決する手法として注目されているのが、検索拡張生成、通称RAG(Retrieval-Augmented Generation)である。RAGは、生成AIに外部の知識源から関連情報を検索させ、その情報を基に回答を生成させる技術だ。これにより、AIは独自のデータや特定の専門分野に関する質問にも、より正確に答えられるようになる。
本稿では、Java開発で広く利用されているSpring FrameworkのAI連携機能「Spring AI」を用いて、RAGを応用したアプリケーションを構築するプロセスを解説する。具体的には、ユーザーの好みに合わせた映画を推薦するパーソナライズサービスを開発する。このシステムは、ユーザーが過去に高く評価した映画の情報を基に、ベクトルデータベースを利用して類似の映画を探し出し、その結果を生成AIが自然な推薦文として要約・提示する仕組みである。
このシステムを構築するために、いくつかの主要な技術要素が利用される。まず、アプリケーションの土台となるのが「Spring AI」だ。これはSpring FrameworkにAI機能を統合するためのライブラリであり、開発者がAIモデルとの複雑なやり取りを意識することなく、簡潔なコードでAI機能を実装できるよう支援する。次に、AIモデルそのものを提供するのが「Ollama」である。Ollamaは、大規模言語モデル(LLM)を個人のコンピュータ上で手軽に実行できるツールで、クラウドサービスに依存せずにAIを利用できるため、開発や学習用途に適している。
そして、RAGの中核を担うのが「ベクトルデータベース」である。今回の例では「Elasticsearch」が使用される。ベクトルデータベースは、テキストや画像などのデータを「ベクトル」と呼ばれる数値の配列に変換して保存する。このベクトルはデータの意味的な特徴を捉えており、データベースはベクトル間の距離を計算することで、単なるキーワード一致ではなく「意味が近い」データを高速に検索できる。映画のあらすじやジャンル、俳優といった情報をベクトル化して保存しておくことで、「マフィア一族の物語」といった曖昧なクエリに対しても、意味的に関連性の高い「ゴッドファーザー」のような映画を見つけ出すことが可能になる。
開発の具体的な流れは次のようになる。まず、映画のタイトル、公開年、あらすじなどの情報を含むデータセットを用意する。次に、これらの映画情報を一つずつベクトル化(エンベディング)し、Elasticsearchに保存する。これがシステムの知識源となる。続いて、ユーザーからの推薦リクエストを受け付けるAPIを実装する。リクエストにはユーザーIDが含まれており、システムはまず、そのユーザーが過去に高く評価した映画のリストを取得する。そして、その映画のベクトル情報を基に、ベクトルデータベース内で類似する他の映画を検索する。これがRAGにおける「検索(Retrieval)」のステップである。最後に、検索結果として得られた類似映画のリストを、あらかじめ設定した指示文(プロンプト)と共に生成AIに渡す。生成AIは、この提供された情報を基に(Augmented)、ユーザー個人に向けた説得力のある推薦文を生成(Generation)して返す。
このようにSpring AI、Ollama、そしてベクトルデータベースを組み合わせることで、生成AIの知識を特定のデータで拡張し、より高度で実用的なアプリケーションを構築できる。この手法は、映画推薦だけでなく、社内文書に基づいたQ&Aシステムや、個人の医療記録を参考にした健康アドバイスなど、様々な分野への応用が期待される。