【ITニュース解説】Japan Just Joined Horizon Europe — Here's How I'm Getting Open-Science Ready with CV HAL and Zenodo
2026年10月08日に「Dev.to」が公開したITニュース「Japan Just Joined Horizon Europe — Here's How I'm Getting Open-Science Ready with CV HAL and Zenodo」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
日本がEUの大型研究プログラム「Horizon Europe」に正式参加し、日本の機関がEUから直接資金を受け、プロジェクトを主導可能になった。参加には研究成果の公開が義務付けられ、HALやZenodoなどのツールを使い、論文やデータを公開・管理する準備が求められる。
ITニュース解説
最近、日本は欧州連合(EU)の巨大な研究・イノベーションプログラム『Horizon Europe』に正式に仲間入りした。これは2026年7月30日のことで、日本はこのプログラムに加盟する23番目の国となった。これまでは、日本の大学や企業がEUのプロジェクトに参加する場合、基本的に自分たちでお金を用意する必要があった。しかし、今回日本が正式に加盟したことで、状況は大きく変わる。日本の研究機関や企業は、EU加盟国の組織と全く同じ立場で、このプログラムの大きな資金(特に524億ユーロ規模の『柱II』と呼ばれる分野)を直接受け取ることができるようになる。さらに、プロジェクト全体を自分たちが主導することも可能になる。これは、日本の研究者やエンジニアが世界の最先端の研究開発に深く関わり、国際的なプロジェクトでリーダーシップを発揮する大きなチャンスとなる。
しかし、この新たな機会には一つ重要な条件が伴う。Horizon Europeの資金を得るためには、『オープンサイエンス』と呼ばれる新しいルールを必ず守らなければならない。オープンサイエンスとは、研究のプロセスや成果を可能な限り多くの人々に公開し、共有することで、科学の透明性を高め、発展を加速させようという考え方である。これは単なる推奨ではなく、資金提供の契約書に明記された義務である。具体的には、査読を受けて出版された論文は、出版社によるアクセス制限(エンバーゴ)なしに、即座に公開することが求められる。つまり、論文が世に出たその瞬間に、信頼できるオンライン上の保管場所(リポジトリ)に、公開版または最終受理された原稿を預ける必要がある。また、その公開された論文には、誰でも自由に利用できるライセンス(CC BYなど)を設定し、論文の情報を記述するメタデータも自由にアクセスできる形(CC0)で公開し、見つけやすく、アクセスしやすく、相互運用可能で、再利用可能な『FAIR原則』に則る必要がある。さらに、論文だけでなく、研究で得られたデータも『可能な限りオープンに、必要な限りクローズに』という原則のもと、適切なリポジトリに預けることが義務付けられる。これは、研究の再現性や透明性を確保し、新たな発見やイノベーションを促進するために非常に重要な取り組みである。
このようなオープンサイエンスの義務を果たすために不可欠なのが、『リポジトリ』と呼ばれるオンライン上のデータ保管庫である。リポジトリは、論文や研究データ、さらにはプログラムのソースコードなどを安全に保存し、永続的に公開するためのシステムである。Horizon Europeのコンプライアンス(規則遵守)に完全に適合していると評価されているリポジトリは限られているが、記事の筆者はその中でも特に『CV HAL』と『Zenodo』の二つを効果的に活用している。これらは、研究者が自身の研究成果を適切に公開し、オープンサイエンスの要件を満たすための強力なツールである。
CV HALは、フランス発のオープンアーカイブで、研究者が自分の論文や研究成果を公開し、管理するためのプラットフォームである。特に注目すべき機能は、『IdHAL』と『CV HAL』である。IdHALは、研究者一人ひとりに割り当てられる永続的な著者IDであり、これによって自分の名前の表記ゆれ(例えば『山田太郎』と『T. Yamada』)を一つにまとめ、全ての研究成果を一元的に管理できるようになる。そして、CV HALは、このIdHALに紐付けられた論文リストが自動的に更新される、公開可能なプロフィールページのことである。欧州の研究パートナーが共同研究者を探す際、きちんとした公開プロフィールは、信頼性を示す上で非常に役立つ。自分の研究歴や業績を常に最新の状態でアピールできるため、国際的な共同研究の機会を広げることにも繋がる。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これは自身のプロジェクトやスキルをGitHubなどで公開し、技術的な貢献をアピールする場と捉えると理解しやすい。設定も簡単で、HALアカウントを作成し、少なくとも一つの成果物を登録してからIdHALを作成し、自身の研究成果を登録していけばよい。
Zenodoは、欧州原子核研究機構(CERN)とOpenAIREによって開発された、汎用的な研究データリポジトリである。EUからの資金提供を受けて運営されており、Horizon Europeの要件を満たすための自動チェック機能も備えている。このZenodoがシステムエンジニアにとって特に魅力的なのは、そのGitHubとの連携機能である。GitHubで管理しているプロジェクトのリポジトリをZenodoに接続すると、GitHubで新しい『リリース』を作成するたびに、そのコードやデータがZenodoにアーカイブされ、固有の『DOI』(Digital Object Identifier)が自動的に発行される。DOIは、インターネット上のデジタルオブジェクトに与えられる永続的な識別子で、論文やデータ、コードを引用する際に使われる。これにより、たとえ元のウェブサイトがなくなっても、そのDOIさえあれば、目的の成果物にアクセスできるというメリットがある。Zenodoは、研究成果物のバージョニング機能も充実しており、全てのバージョンをまとめて参照できる『コンセプトDOI』と、各バージョンに個別のDOIが割り当てられるため、特定の研究データやコードのバージョンを正確に引用し、追跡することが可能である。また、Horizon Europeのプロジェクト資金で得られた成果物であることを示す『資金提供メタデータ』も付与できるため、プロジェクトの報告作業も格段に楽になる。OpenAIREも、どのリポジトリに預けるべきか迷った場合は、ZenodoのEU Open Research Repositoryを利用することを推奨している。つまり、論文はHAL、コードやデータはZenodoという組み合わせが非常に効果的である。
記事の筆者は、このようなHALとZenodoの特性を活かした効率的なワークフローを実践している。具体的には、論文などの学術的な成果物はHALに登録し、研究データやプログラムのソースコードはZenodoに登録している。そして、自身のオンライン上のIDを管理する『ORCID』をハブとして、HALのIdHALとZenodoの両方にリンクさせている。論文が学術誌に受理されたら、すぐにその論文の最終受理原稿をHALに公開し、ライセンスはCC BYを設定する。一方、開発したプログラムのコードはGitHub上で管理し、重要な節目で『リリース』を切り、それをZenodoと連携させることで、コードに永続的なDOIを付与している。そして、発表する論文には、その研究で使われたデータやコードの入手先として、Zenodoで発行されたDOIを明記することで、他の研究者が容易にアクセスし、検証できるようにしている。また、欧州のパートナーと共同研究の話を進める際には、自分のCV HALのリンクを共有することで、自身の研究実績を効果的にアピールしている。この一連のプロセスは、研究成果の信頼性を高め、再現性を保証し、国際的な共同研究を円滑に進める上で非常に有効な手段となっている。
Horizon Europeへの日本の参画は、システムエンジニアを目指す皆さんにとっても、国際的な研究開発プロジェクトに貢献する大きなチャンスとなるだろう。特に、AI、IoT、サイバーセキュリティなど、デジタル技術が関連する分野では、その機会はさらに広がるはずだ。この新たな機会を最大限に活用するためには、今のうちからオープンサイエンスへの準備を進めておくことが賢明である。具体的には、自分自身のORCIDアカウントを作成し、所属情報や過去の業績を最新の状態に保つこと。そして、CV HALとZenodoのアカウントを開設し、GitHubアカウントとZenodoを連携させておくことが推奨される。また、自身のプログラムのリポジトリには、適切なライセンス(LICENSEファイル)と引用情報(CITATION.cffファイル)を追加することも忘れてはならない。さらに、プロジェクトを行う際には『データ管理計画(DMP)』のテンプレートを準備し、所属する研究機関の研究支援オフィスにHorizon Europeの募集情報について確認しておくことも重要である。これらの準備を怠らず、HALとZenodoを日常的な研究・開発活動の一部として取り入れることで、いざ国際プロジェクトの募集が始まった時に慌てず、スムーズに参画できる体制を整えられる。日本がHorizon Europeに加わったことで、総額524億ユーロもの大規模な資金が投入される研究プロジェクトを主導できる道が開かれた。この入り口にあるオープンサイエンスの要件は、HALとZenodoを普段から活用していれば、決して難しいものではない。この大きなチャンスを逃さないためにも、今からしっかりと準備を進めてほしい。