【ITニュース解説】Why I Stopped Using Generic AI for Cold Emails (And What I Built Instead)
2026年09月14日に「Dev.to」が公開したITニュース「Why I Stopped Using Generic AI for Cold Emails (And What I Built Instead)」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
従来のAIでは定型的な営業メールしか作れず、効果が薄い。筆者は、顧客の文脈を理解し、デバイス内で動くプライベートAI「coldmailer」を開発した。このツールは、入力情報から相手に合わせた3ステップのメールを自動生成する。高速で安全、個別のメッセージ作成を効率化できる。
ITニュース解説
ビジネスの世界では、まだ面識のない相手に送る「コールドメール」が新しい顧客を獲得するための重要な手段の一つだ。しかし、多くの人が経験するように、時間をかけて作成し送信しても、ほとんど返信がないことが少なくない。これは、送られてくるメールのほとんどが、いかにもテンプレートを使い回したような、型にはまった内容だからだ。受け取った側は自分向けではないと感じ、すぐに読み飛ばしてしまう。
記事の筆者はこの問題を解決するため、一般的なAIツールに頼るのをやめ、全く新しいアプローチでツールを開発したという。従来のAIを使ったコールドメール作成では、定型文に相手の名前や会社名といった変数を挿入するだけの「パーソナライゼーション(個別化)」が主流だった。しかし、これは本当の意味での個別化とは言えない。本当の個別化とは、相手の現在の状況や課題を深く理解し、それに対して自分のソリューションがどのように役立つのかを的確に伝えることを意味する。
真の個別化を実現しようとする時、開発者や事業家が直面する最大の課題は、メール本文を書くこと自体ではない。むしろ、メールを作成する前の「リサーチ」に膨大な時間を費やすことだった。例えば、見込み客の最近のツイートやブログ記事、会社の最新ニュースなどを詳しく調べ、彼らが今何に興味を持ち、どんな課題を抱えているのかを推測し、その情報に基づいてメールの冒頭文を作成するのだ。
しかし、このリサーチ作業には「コンテキストスイッチ」という問題がある。リサーチモードで情報を集めている最中に、今度はメールを書くモードに切り替えると、数分前に読んだ情報から得たインスピレーションやニュアンスが薄れてしまいがちだ。このように異なる作業モードを行ったり来たりすることは、集中力を著しく低下させ、作業効率を落とす原因となる。
筆者はこの課題を解決するため、「coldmailer」というツールを開発した。このツールの画期的な点は、一般的なクラウドベースのAI、つまりインターネットを通じて外部サーバーで処理を行うAIとは異なり、AIの主要な処理を「ローカル」、つまり利用者のパソコンやブラウザ内で直接実行する設計になっていることだ。これは単にプライバシー保護のためだけではない。処理を自分のデバイス内で完結させることで、入力した情報に対するAIの反応が「ほぼ瞬時」になるというパフォーマンス上の大きなメリットがあるのだ。外部サーバーとの通信による時間的な遅延(レイテンシ)がないため、まるで隣に共同作業者がいるかのように、スムーズにメール作成を進められる。
このローカルAIを核としたワークフローは非常にシンプルでありながら、強力な効果を発揮する。まず、利用者は自分の「ペルソナ」を定義する。例えば、「ノーコードのデータ分析ツールを開発するSaaSの創業者」といった具合に、自分がどのような立場で何を提供しているのかを具体的に説明する。次に、「提供するソリューション」について、それがどんなもので、他と何が違うのかを簡潔に説明する。そして最も重要なのが「コンテキストの入力」だ。見込み客に関する情報として、彼らの最近の活動を示すリンク(例えばツイートやブログ記事)や、具体的な情報スニペット(「最近シリーズAの資金調達を行った」や「データプライバシーの課題について投稿していた」など)を貼り付ける。
すると、このローカルで動作するプライベートAIが、入力された全ての情報を瞬時に分析・統合し、単一のメールではなく「3段階のアウトリーチシーケンス」を生成する。このシーケンスは、物語のように段階的に相手との関係を築くことを目的としている。最初のステップは、見込み客の最近の活動に焦点を当てた魅力的な「フック」(引き込み)だ。次のステップでは、見込み客にとって価値のある情報を提供しつつ、まだ何かを要求しない。そして最後のステップで、初めて具体的な提案へと優しく導く形をとる。このプロセスが全てデバイス上で実行されるため、利用者は入力内容を少し変更するだけで、すぐにAIが生成するメールの内容がリアルタイムで変化するのを確認できる。これは、機械的な処理を待つのではなく、隣に座った共同ライターと対話しながら文章を練り上げていくような感覚に近い。
なぜこの「3段階のシーケンス」がそれほど重要なのか。多くの人は、コールドメールを1通送って返信がなければ、そこで諦めてしまう。しかし、これまでのデータ分析によると、返信の多くは2通目や3通目のフォローアップメールから得られることが一貫して示されている。従来のフォローアップメールは「以前のメールを確認しましたか」や「この件について再度ご連絡します」といった、内容の薄いものがほとんどだった。これでは、相手に与える印象は最初のメールと大差なく、効果は期待できない。
coldmailerでは、この問題を解決するために、利用者が最初から「シーケンス」という考え方でメール作成に取り組むよう促す。最初に自分のペルソナと提供するソリューションを定義しておくことで、AIはフォローアップメールが単なる繰り返しにならないように配慮する。例えば、最初のメールで相手の最近の資金調達について言及した場合、2通目のメールでは、その資金調達によって解決できるであろう課題に対する具体的なケーススタディを提示するといった具合だ。そして3通目では、さらに踏み込んで、相手の成長戦略について具体的な質問を投げかけることもできる。この構造化されたアプローチは、「次に何を言えばいいか」という不安を解消し、コールドアウトリーチを単なる当てずっぽうな試みから、意図的で効果的な「構造化された会話」へと変貌させる。
開発者としての視点から見ると、筆者はリサーチとメール作成の間のギャップにうんざりしていたことがこのツールの開発動機だったという。システムエンジニアにとって、思考の負担(認知負荷)を減らしてくれるツールは非常に価値がある。筆者は、複雑な顧客管理システム(CRM)との連携を設定したり、大切な顧客データのセキュリティについて常に心配したりすることなく、迅速に効果的なメールを作成したかったのだ。
AIをプライベートかつデバイス上で実行する設計にしたことで、外部サービス利用に伴うAPI(プログラム同士が連携するための仕組み)の使用制限や、データ通信の遅延といった問題も解消された。このツールは高速で、安全であり、目的が明確だ。自分の提供するものを説明し、見込み客の情報を入力するだけで、高い成果に繋がる文章が手に入る。余計な要素は一切なく、シンプルかつ効率的にコールドメールを作成できるのが、このcoldmailerの最大の魅力だと言えるだろう。
筆者は、創業者や営業責任者に対し、コールドアウトリーチを大規模に個別化する際に直面する最大の障害は何か、という問いを投げかけている。これは、今後もこの分野でさらなる改善や開発の可能性があることを示唆している。