【ITニュース解説】Why Use SQL Databases for AI Agent Memory
2025年09月13日に「Dev.to」が公開したITニュース「Why Use SQL Databases for AI Agent Memory」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
AIエージェントの記憶にはSQLデータベースが最適だ。広く普及し、チャット履歴や設定など構造化データを安価かつ効率的に保存・検索できる。管理・デバッグが容易で透明性が高く、既存技術の活用で開発コストを抑えられるため、初心者にも始めやすい。
ITニュース解説
AIエージェントが過去の会話内容、ユーザーの好み、重要な事実などを覚えておくためには、「記憶」が必要となる。この記憶をどのように保存するかについては、様々な方法が検討されている。例えば、ベクトルデータベースを使う方法、JSONファイルを直接使う方法、あるいは独自のストレージを構築する方法などがある。しかし、数ある選択肢の中でも、SQLデータベースはAIエージェントの記憶を保存する上で、最も優れていてシンプルであるとされている。
SQLデータベースは、50年以上にわたり、世界のアプリケーションを支え続けてきた実績を持つ技術である。スマートフォンアプリからウェブプラットフォームに至るまで、SQLite、PostgreSQL、MySQLといったSQLエンジンが、私たちの身の回りのほとんどのシステムで稼働している。例えば、SQLiteだけでも40億以上のデバイスで利用されており、iPhone、Androidデバイス、そしてウェブブラウザの動作を支えている。SQLデータベースは、金融、医療、政府機関、通信といったミッションクリティカルな分野で、日々何兆ものクエリを処理している。特にSQLのACID特性と呼ばれる仕組みは、電源障害やシステムクラッシュ時でもデータの整合性を保証するため、信頼性が非常に高い。このような実績を持つSQLが、AIエージェントの記憶に活用されない手はないだろう。
AIエージェントが記憶する情報は、多くの場合、構造化されたデータである。具体的には、ユーザーが誰であるか、エージェントとユーザーが何を話したか、どのようなタスクが実行されたか、いつ、なぜ特定のことが言われたかといった情報だ。これらの事実、好み、スキル、ルール、関係性といった構造化されたデータは、SQLデータベースが得意とする分野である。SQLを使えば、このような情報を容易に保存し、検索し、更新することができる。これは人間が短期記憶や長期記憶を持ち、ルールや好みを永続的に保持する仕組みに似ていると言える。
SQLデータベースを利用することで、AIエージェントの記憶は透明性が高く、簡単に検索できるようになる。例えば、エージェントに「先週、私のプロジェクトについて何を聞きましたか?」と尋ねたとしよう。SQLデータベースを使っていれば、"SELECT * FROM memory WHERE user = 'Alice' AND topic = 'project' AND timestamp >= last_week;"といった簡単なクエリを実行するだけで、瞬時に答えを得ることができる。このように、SQLは非常に正確なクエリを可能にし、テーブル間の関連性をジョイン機能で扱うことができ、バックアップも容易である。ベクトルデータベースでは、なぜ特定の記憶が呼び出されたのかが分かりにくい場合があり、デバッグや選択的な情報の呼び出しが難しいという課題がある。
運用コスト面でも、SQLデータベースはベクトルデータベースに比べて優位性を持つ。ベクトルデータベースは強力なツールだが、運用には多大な費用がかかることがある。テキストを数値のベクトルに変換するためのトークン埋め込み生成費用、高価な専門のベクトルストレージ費用、記憶の増加に伴って高くなる類似性検索のクエリ費用、さらにはRedisキャッシュやオーケストレーション層、関係性処理のためのグラフデータベースなど、追加のインフラ費用も発生する。これに対し、SQLデータベースを利用すれば、通常のPostgreSQL、MySQL、またはSQLiteを使えばよい。これらの多くは無料で利用でき、AWS、Azure、Supabaseなどのマネージドサービスでも月に数ドル程度の低コストで利用可能だ。
具体的なコスト比較を見ると、SQLベースの記憶システムは、ベクトルデータベースと比較して大幅なコスト削減を実現できることがわかる。例えば、1万件の記憶を持つスタートアップレベルでは、SQLが月額45ドルであるのに対し、ベクトルデータベースは250ドルと5倍以上高くなる。100万件の中規模では、SQLが1,050ドルであるのに対し、ベクトルデータベースは2,200ドルとなる。1,000万件の大規模な利用においても、SQLは8,500ドル、ベクトルデータベースは15,000ドルとなり、毎月6,500ドル以上の節約が可能となる。
ストレージ効率の面でもSQLは優れている。SQLデータベースに保存される記憶のエントリは、構造化されたJSONデータとメタデータで構成されるため、非常にコンパクトである。SQLの場合、1エントリあたり約2.8KBであるのに対し、ベクトルデータベースでは約9KBとなり、SQLの方が約70%もフットプリントが小さい。この差は大規模なデータ量になると顕著で、100万件の記憶を保存する場合、SQLでは約2.8GBで済むが、ベクトルデータベースでは約9.2GBが必要となる。クラウドプロバイダーはストレージ容量に応じて課金するため、この差はコストに直結する。
SQLデータベースは、デプロイとインフラの管理も容易である。SQLiteのようにサーバー不要で単一ファイルで動作するものもあれば、PostgreSQLやMySQLであれば主要なクラウドプロバイダーで数分でマネージドインスタンスを立ち上げることができる。スケーリングもシンプルで、小規模プロジェクトでは垂直スケーリング、大規模なデプロイではシャーディングやレプリケーションといった手法が確立されている。何十年にもわたる歴史の中で、監視ダッシュボード、マイグレーションツール、バックアップシステム、管理インターフェースなど、豊富なツールが整備されている。一方でベクトルデータベースは、安定稼働のために専門のクラスター、キャッシュ、カスタムAPIなどを必要とすることが多く、複雑になりがちだ。SQLデータベースなら、アイデアからAIエージェントの記憶システム稼働までを、インフラの複雑さに悩まされることなく、短時間で実現できる。
デバッグとメンテナンスの容易さもSQLの大きな利点である。AIエージェントの記憶に問題が発生した場合、SQLテーブルを開いて記憶内容を直接確認できるため、原因特定が非常に簡単だ。ベクトルデータベースのようなブラックボックスシステムとは異なり、SQLは透明性が高い。開発者は、エージェントが何を記憶したか、記憶が正しく保存されているかを確認し、間違いがあれば簡単に修正できる。特定の会話や事実を素早く検索するクエリを実行したり、データベースファイル全体をコマンド一つでバックアップしたりすることも可能である。ベクトルデータベースが複数サービスを必要とすることが多いのとは対照的に、SQLのシンプルさはメンテナンスの負担を大幅に軽減する。SQLのシンプルさは、移植性の高さ、AIの決定プロセスを記録する監査可能性、金融や医療といった業界で求められるコンプライアンス対応にも貢献する。
もちろん、SQLがすべてのシナリオで完璧というわけではない。構造化された記憶、透明性、コスト効率においては優れているが、ベクトルデータベースやハイブリッドアプローチが適しているケースも存在する。例えば、キーワードや特定のエンティティに依存せず、「この段落に最も類似するテキスト箇所を探す」といった純粋な意味での類似性検索が必要な場合、SQLの全文検索機能では限界があり、ベクトルデータベースが優位となる。また、画像、音声、動画といったマルチメディアデータをリアルタイムで処理し、ベクトルの形で比較する必要がある場合も、ベクトルデータベースの方がこれらのワークロードに最適化されている。数億から数十億といった超大規模なデータセットを扱う場合や、毎秒数百万件もの類似性クエリを処理する必要がある場合も、分散型ベクトルデータベースのパフォーマンスが有利となることがある。しかし、これらの超大規模な要件は、一般的なAIエージェントの記憶システムでは稀であり、グローバルな検索エンジンや大規模なSaaS製品、ソーシャルネットワークなどでしか通常は必要とされない。
最終的に、AI技術は急速に進歩しているが、既存の技術が最良の選択肢となる場合も多い。SQLデータベースは数十年にわたり世界のアプリケーションを支えてきた実績があり、その信頼性と成熟度はAIエージェントの記憶システムにおいても大いに役立つ。会話、事実、好みをSQLに保存することで、AIエージェントはより役立ち、信頼性が高く、そして手頃な価格で運用できるようになる。SQLデータベースを利用することで、実績のある技術の活用、構造化された記憶の管理、標準SQLによる容易なクエリ、大幅なコスト削減、そしてコンプライアンス対応のための透明性と監査可能性といった多くのメリットが得られる。