【ITニュース解説】Reactive Programming and Observables with RxJS

2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Reactive Programming and Observables with RxJS」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

RxJSは、時間と共に流れるデータ(データストリーム)を扱う「リアクティブプログラミング」をJSで実現するライブラリ。Observableという仕組みで非同期処理を扱いやすくし、オペレータでデータの変換や絞り込みを簡単に行える。

ITニュース解説

現代のソフトウェア開発において、非同期処理は避けて通れない重要な概念である。サーバーとの通信、ユーザーの入力イベントの処理など、多くの処理はいつ完了するか予測できない非同期的な性質を持つ。このような非同期処理を効率的に扱うためのプログラミング手法の一つが「リアクティブプログラミング」である。RxJS(Reactive Extensions for JavaScript)は、JavaScriptでこのリアクティブプログラミングを実践するためのライブラリであり、非同期処理やコールバックを多用するコードをより簡潔で管理しやすくするために設計されている。

リアクティブプログラミングを理解する上で中心となるのが「データストリーム」という考え方だ。データストリームとは、時間の経過と共に発生する一連のデータの流れを指す。例えば、ユーザーがボタンをクリックするたびに発生するクリックイベント、ウェブサイトをスクロールする際の座標データ、サーバーから断続的に送られてくるメッセージなどがデータストリームにあたる。これらのデータは、いつ、どれくらいの頻度で発生するかが事前にわからない。リアクティブプログラミングは、このような連続的で非同期的なデータの流れをストリームとして捉え、新しいデータが発生した際に、そのデータに依存するシステムの一部が自動的に「反応(react)」して状態を更新するという考え方である。RxJSは、このデータストリームを扱うための強力なツールを提供する。

RxJSでは、データストリームを「Observable(オブザーバブル)」というオブジェクトで表現する。Observableは、データを生成し、そのデータを必要とする先に通知する「生産者」としての役割を担う。Observableが発行する通知には3つの種類がある。第一に「Next通知」で、これはデータストリーム内の新しい値を配送する。ストリームを流れる実際のデータは、このNext通知によって伝えられる。第二に「Error通知」で、これはストリームの処理中に何らかのエラーが発生したことを示す。エラーが発生した場合、ストリームは即座に停止する。第三に「Complete通知」で、これはストリームが正常に全ての処理を完了したことを示す。Error通知またはComplete通知が一度発行されると、そのObservableはそれ以上何も通知を発行しなくなり、ストリームは終了する。

Observableがデータを生成するだけでは意味がなく、そのデータを受け取って処理する「消費者」が必要である。この消費者の役割を担うのが「Observer(オブザーバー)」だ。Observerは、Observableから発行されるNext、Error、Completeの各通知に対して、それぞれどのように振る舞うかを定義したオブジェクトである。具体的には、Next通知で受け取ったデータを処理する関数、Error通知が発生した際のエラーハンドリング関数、Complete通知を受け取った際の完了処理関数を記述する。そして、このObservable(生産者)とObserver(消費者)を結びつけるのが「Subscription(サブスクリプション)」である。Observableのsubscribe()メソッドを呼び出すと、ObserverがObservableに接続され、Subscriptionオブジェクトが生成される。この瞬間に初めてObservableはデータの生成と通知の送信を開始する。Subscriptionは、文字通りデータストリームの「購読」を意味し、購読が不要になった場合はunsubscribe()メソッドを呼び出して解除する必要がある。特に、ウェブアプリケーションのコンポーネントのように長期間存在するオブジェクトで購読を解除し忘れると、不要な処理が実行され続け、メモリリークやパフォーマンス低下といった深刻な問題を引き起こす可能性があるため、適切な購読管理は非常に重要である。

RxJSが強力なライブラリであると言われる所以は、その豊富に用意された「オペレーター」にある。オペレーターは、Observableが発行するデータストリームを操作するための純粋関数である。これらを使うことで、ストリームの変換、フィルタリング、結合といった複雑な処理を宣言的に、かつ簡潔に記述することが可能になる。オペレーターは大きく二つに分類される。一つは「Creationオペレーター」で、これは新しいObservableをゼロから生成する。例えば、of()オペレーターは、引数として渡された値を順番にNext通知として発行し、その後すぐにComplete通知を発行するObservableを簡単に作成できる。もう一つは「Pipeableオペレーター」で、これは既存のObservableを元に、データストリームを加工して新しいObservableを返す。これらのオペレーターは、Observableのpipe()メソッド内で連鎖させて使用する。代表的なPipeableオペレーターにはmap()filter()がある。map()は、ストリームを流れる各値に指定した関数を適用し、その結果を新しい値として後続のストリームに流す。例えば、数値のストリームを10倍した値のストリームに変換できる。filter()は、指定した条件を満たす値だけを通過させる。例えば、数値のストリームから偶数だけを抽出することができる。これらのオペレーターをpipe()メソッド内で組み合わせることで、map()で変換した後の値をfilter()で絞り込むといった、多段階のデータ処理パイプラインを構築できる。

Observableとオペレーターの組み合わせは、特に非同期処理やイベント駆動型のシナリオでその真価を発揮する。具体的な応用例としては、サーバーへのHTTPリクエストが挙げられる。リクエストの結果は非同期に返ってくるが、これをObservableとして扱うことで、成功時のデータ処理、エラー時の処理、完了時の処理をObserverで一元的に管理できる。また、ユーザーのクリックやキー入力といったUIイベントも、いつ発生するかわからないデータのストリームとして扱うのに最適である。さらに、NgRxのような状態管理ライブラリでは、アプリケーションの状態変更をObservableのストリームとして扱い、状態が更新されるたびにUIが自動的に反応して再描画されるというリアクティブなアーキテクチャを実現している。このように、Observableは非同期データを一貫性のあるクリーンな方法で扱うための強力な基盤となる。RxJSを学ぶことは、現代的なウェブアプリケーション開発における複雑な非同期処理を効率的に実装するための重要なスキルと言えるだろう。