【ITニュース解説】REST Isn’t Just About JSON Over HTTP

2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「REST Isn’t Just About JSON Over HTTP」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

REST APIは単なる「JSON over HTTP」ではない。提唱者が重視したHATEOAS原則では、サーバーからの応答に次に行える操作へのリンクを含める。クライアントはこれを辿ることで動的にAPIを操作でき、柔軟なシステム構築が可能になる。

出典: REST Isn’t Just About JSON Over HTTP | Dev.to公開日:

ITニュース解説

多くの開発現場で「REST API」という言葉が使われる際、それは一般的にHTTPプロトコル上でJSON形式のデータをやり取りし、「/users」や「/orders」のような決まったエンドポイントでデータの作成、読み取り、更新、削除を行うAPIを指すことが多い。この方法は実用的で広く普及しているが、RESTの概念を提唱したロイ・フィールディングによれば、これは本来のRESTの姿とは異なる。現在「REST API」という用語は、事実上「JSONを利用するAPI」の同義語のように使われているのが現状である。RESTとは「Representational State Transfer」の略であり、特定の技術ではなく、ソフトウェアを設計する上での思想、すなわち「アーキテクチャスタイル」を指す。このスタイルは、システムが従うべき6つの制約によって定義されており、これらすべてを満たして初めて「RESTful」であると呼ぶことができる。

第一の制約は「クライアントサーバー分離」である。これは、ユーザーインターフェースを担当するクライアントと、データ保存やビジネスロジックを担うサーバーの役割を明確に分ける考え方だ。この分離により、クライアントとサーバーは互いに独立して開発や改修を進めることが可能になる。例えば、APIの仕様さえ変わらなければ、サーバー側に一切手を加えることなくWebアプリケーションのフロントエンドを刷新したり、モバイルアプリに置き換えたりできる。また、サーバーはデータ処理に、クライアントは情報の表示にそれぞれ専念できるため、システムの拡張性も向上する。

第二に「ステートレス」という制約がある。これは、サーバーがクライアントの状態や過去のやり取り(セッション情報)を一切保持しないことを意味する。クライアントから送られる各リクエストは、サーバーがそれを処理するために必要な情報をすべて含んでいなければならない。例えば、認証が必要な操作であれば、リクエストごとに認証情報(トークンなど)を付与する必要がある。この設計により、どのサーバーでもリクエストを処理できるようになるため、負荷分散が容易になり、システム全体の拡張性や信頼性が大幅に向上する。あるサーバーに障害が発生しても、他のサーバーが即座にリクエストを引き継ぐことができる。

第三の制約は「キャッシュ可能性」だ。これは、サーバーからのレスポンスに、そのデータを再利用(キャッシュ)して良いか、またその有効期間はどのくらいかを明示する情報を含めるべきだという原則である。クライアントや、通信経路の途中にある中継サーバーは、この情報に基づいて一度取得したデータを保存し、同じリクエストが来た際にはサーバーに問い合わせることなく保存したデータを使用できる。これにより、サーバーの負荷が軽減され、ネットワークトラフィックが削減され、ユーザーへの応答速度が向上する。

第四に、RESTの最も重要な柱とされる「統一インターフェース」がある。これは、クライアントとサーバー間のやり取りを、あらかじめ定義された一貫性のある方法に限定することで、システム全体をシンプルに保つという制約である。この制約はさらに4つの原則から構成される。まず、すべてのリソース(データ)はURIによって一意に識別される。次に、クライアントはサーバー上のリソースを直接操作するのではなく、JSONなどの「表現」を通じて間接的に操作する。そして、各メッセージ(リクエストやレスポンス)は、それ自体で処理方法が理解できる自己記述的なものでなければならない。HTTPメソッド(GET、POSTなど)やヘッダーがこの役割を担う。

そして、統一インターフェースの最後の原則であり、今日の多くのAPIで見過ごされているのが「HATEOAS(Hypermedia as the Engine of Application State)」である。これは、クライアントが次に実行可能な操作を、サーバーからのレスポンスに含まれるハイパーメディア(リンク)をたどることで動的に発見すべきだという考え方だ。例えば、あるユーザーの情報を取得するリクエストを送ると、サーバーはそのユーザー情報と共に「このユーザーの注文一覧を取得するリンク」や「このユーザー情報を更新するリンク」をレスポンスに含めて返す。クライアントは、APIのドキュメントを読んでエンドポイントのURLを事前にプログラムに書き込んでおくのではなく、このリンクを解釈して次のアクションを決定する。この仕組みにより、サーバー側でURL構造が変更されても、クライアントは変更の影響を受けにくくなり、APIの柔軟性と進化可能性が飛躍的に高まる。

第五の制約は「階層化システム」である。これは、クライアントとサーバーの間にロードバランサーやプロキシ、ゲートウェイといった複数の中間層が存在することを許容する設計原則だ。クライアントは、通信相手が最終的なデータを持つサーバーなのか、それとも手前の中継サーバーなのかを意識する必要はない。この階層化により、セキュリティの強化や負荷分散など、システム全体のアーキテクチャを柔軟に構成することが可能になる。

最後に、唯一任意とされる制約が「コードオンデマンド」である。これは、サーバーが必要に応じて実行可能なコード(例えばJavaScript)をクライアントに送信し、クライアントの機能を一時的に拡張することを許可するものである。WebブラウザがサーバーからJavaScriptをダウンロードして実行することで動的なページを実現するのが典型的な例だ。これにより、クライアントは汎用的な機能を持ちつつ、サーバーからの指示で特定の処理を実行できるようになり、システムの柔軟性が増す。

以上のように、RESTは単にJSONをHTTPで送受信する技術ではなく、これら6つの制約に基づいた厳格な設計思想である。現在広く使われているAPIの多くは、特にHATEOASの原則を満たしていないため、厳密には「RESTライク」なシステムと言える。RESTの真の力を引き出すには、これらの原則、とりわけハイパーメディアの活用を理解することが不可欠である。