【ITニュース解説】How to easily create a CLI in Rust using clap and clap_mangen

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「How to easily create a CLI in Rust using clap and clap_mangen」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Rustのライブラリ`clap`と`clap_mangen`を使えば、CLIツールの開発が効率化する。コードを一箇所に書くだけで、プログラムの動作とマニュアルページの両方を自動で生成できるため、ドキュメントが古くなるのを防げる。

ITニュース解説

コマンドラインインターフェース、通称CLIツールは、ターミナルやコマンドプロンプトといった画面で文字コマンドを入力して操作するソフトウェアのことである。システムエンジニアやプログラマが日常的に利用するこれらのツールを開発する際、開発者はプログラムの機能実装だけでなく、ユーザー向けのヘルプメッセージやマニュアルの作成も行わなければならない。しかし、機能の追加や変更のたびに手動でドキュメントを更新するのは手間がかかり、更新漏れによってプログラムの実際の動作とドキュメントの内容が食い違うという問題が発生しがちである。今回紹介するRust言語を用いた開発手法は、このような問題を解決し、効率的で高品質なCLIツール開発を実現するものである。

この手法の中核をなすのが、Rustのclapclap_mangenという二つのライブラリである。clapは、CLIツールが受け取るコマンドライン引数やオプションを定義し、解釈するための非常に強力なライブラリだ。特に「derive」という機能を用いることで、プログラムのデータ構造を定義する際に特定の記述を追加するだけで、複雑なコマンド体系を簡単に構築できる。一方、clap_mangenは、clapで定義したコマンドの構造情報から、「manページ」を自動的に生成する役割を担う。manページとは、LinuxやmacOSのようなUnix系オペレーティングシステムで標準的に使われているオンラインマニュアルのことである。ユーザーはターミナルでman <コマンド名>と入力するだけで、インターネット接続がない環境でもコマンドの詳しい使い方を確認できる。自作のCLIツールにmanページを同梱することは、ユーザーにとって親切であり、ツールとしての完成度を高めることにつながる。

この開発手法の最も優れた点は、「単一の情報源(Single Source of Truth)」という考え方に基づいていることだ。これは、プログラムに関する全ての情報を一箇所に集約して管理するという原則である。具体的には、CLIツールのコマンド、サブコマンド、オプションといった仕様を定義したRustのソースコードが唯一の情報源となる。そして、この一つの情報源から、プログラムの実行時にユーザーからの入力を解釈するためのロジックと、ビルド時にユーザー向けのマニュアルであるmanページの両方が自動的に生成される仕組みとなっている。開発の流れとしては、まずclapのderive機能を使って、ツールのコマンド体系を構造体としてコード上に定義する。このとき、コード内に記述したコメントが、そのままヘルプメッセージやmanページの説明文として利用される。次に、プログラム本体では、この定義を元にユーザーが入力したコマンドを解析し、対応する処理を実行する。そして、この手法の鍵となるのがbuild.rsというビルドスクリプトの活用である。build.rsは、プログラムをコンパイルして実行ファイルを作成する「ビルド」という工程で自動的に実行される特別なスクリプトだ。このスクリプト内で、プログラム本体が参照しているのと同じCLI定義ファイルを読み込み、clap_mangenライブラリを呼び出す。すると、clap_mangenが定義情報を解析し、コマンド構造に対応したmanページ一式を自動でファイルに出力する。この結果、開発者はコマンドの仕様をコードで一度定義するだけでよくなる。例えば、新しいオプションを追加した場合でも、コードを修正して再度ビルドするだけで、プログラムの動作とmanページの内容が自動的に同期され、常に最新の状態に保たれる。これにより、ドキュメントの更新忘れという人為的ミスを根本的に防ぐことができるのだ。

このように、clapclap_mangenを組み合わせ、ビルドプロセスにドキュメント生成を組み込む手法は、CLIツール開発におけるドキュメント管理の負担を大幅に軽減する、非常に洗練されたアプローチである。プログラムの仕様とドキュメントが常に一致している状態を自動で維持できるため、開発者はより本質的な機能開発に集中でき、ツールの品質向上にもつながる。システムエンジニアを目指す初学者がプログラミングを学ぶ際には、単にコードを書くだけでなく、今回のような開発プロセス全体を効率化し、ソフトウェアのメンテナンス性を高めるためのツールや設計思想に触れることも極めて重要である。このような知識は、将来的に大規模で複雑なシステムを扱う上で必ず役立つ実践的なスキルとなるだろう。