【ITニュース解説】Apple Watch SE 3 has an S10 chip and always-on display
2025年09月10日に「Engadget」が公開したITニュース「Apple Watch SE 3 has an S10 chip and always-on display」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
新型Apple Watch SE 3は、S10チップ搭載で処理性能が向上。SEシリーズで初となる常時表示ディスプレイと5G通信に対応した。また、皮膚温センサーを追加し、周期記録や睡眠の質を計測するなどヘルスケア機能も大幅に強化。
ITニュース解説
Apple Watch SEの第3世代が、前モデルから3年ぶりに発表された。Apple Watch SEシリーズは、Apple Watchのラインナップにおいて、主要な機能を備えながらも価格を抑えた、いわゆるエントリーモデルに位置づけられる製品である。今回の新モデルは、価格を据え置きながらも、性能や機能面で大幅な進化を遂げており、特にこれまで上位モデルにのみ搭載されていた機能が追加された点が大きな特徴となっている。
製品の心臓部にあたるプロセッサには、新たに「S10チップ」が搭載された。プロセッサは、コンピュータやスマートデバイスにおける「頭脳」の役割を担う半導体チップであり、その性能がデバイス全体の動作速度や処理能力を決定づける。S10チップの搭載により、Apple Watch SE 3はアプリケーションの起動や画面の切り替えといった基本的な操作がより高速かつスムーズになった。また、音声アシスタントであるSiriの応答速度も向上している。さらに、この高性能なチップは、新しい操作方法も実現した。「ダブルタップ」や「手首のフリック」といったジェスチャー(身振り)で、通知を消したりアプリ内の特定のアクションを実行したりできるようになった。これは、内蔵されたセンサーがユーザーの動きを検知し、その情報をS10チップが瞬時に解析・処理することで可能になる機能であり、ハードウェアとソフトウェアが密接に連携している好例と言える。加えて、FaceTimeでの音声通話時には、チップの処理能力を活かして周囲の雑音を抑制し、通話品質を向上させる機能も備えている。通信機能も大きく強化され、SEシリーズとして初めて5Gに対応した。5Gは現在主流の高速移動通信規格であり、これによりiPhoneが近くにない状況でも、Apple Watch単体で高速なデータ通信が可能となる。例えば、ランニング中に音楽をストリーミング再生したり、メッセージを送受信したりする際に、これまで以上に快適な通信環境が提供される。
ディスプレイには、SEシリーズで初となる「常時表示」機能が採用された。これまでのSEモデルでは、バッテリー消費を抑えるために、手首を上げたり画面をタップしたりしない限り画面が消灯していた。しかし新モデルでは、常に時刻や文字盤に配置された情報を確認できるようになった。これは、画面の表示内容に応じてリフレッシュレート(1秒あたりの画面更新回数)を動的に変化させる省電力なディスプレイ技術と、電力効率に優れたS10チップの組み合わせによって実現されている。この技術的工夫により、利便性を高めながらも、バッテリー駆動時間は前モデル同等の「一日中」(最大18時間)を維持している。また、ディスプレイの物理的な耐久性も向上した。カバーガラスの素材や設計が見直され、前モデルと比較して4倍の耐亀裂性を実現しており、日常的な利用における安心感が高まっている。バッテリー関連では、充電速度が前世代の2倍に高速化された点も重要な進化である。Appleによれば、わずか15分の充電で最大8時間のバッテリー駆動が可能となり、朝の短い時間で充電を済ませるといった、より柔軟な使い方ができるようになった。
近年のスマートウォッチで重要視されている健康管理機能も大幅に拡充された。本体には2つの温度センサーが新たに搭載された。これらのセンサーは、装着者の体温データを継続的に計測し、ヘルスケアアプリに記録する。このデータは、特に女性向けの周期記録機能において活用され、排卵日の推定や月経予測の精度向上に貢献する。ハードウェアであるセンサーが収集した生体データを、ソフトウェアのアルゴリズムが解析することで、ユーザーにとって付加価値の高い健康情報を提供するという仕組みである。睡眠追跡機能も強化され、新たに睡眠時無呼吸症候群の兆候を検知して通知する機能が追加された。これも、睡眠中の呼吸パターンなどを各種センサーでモニタリングし、異常が見られた場合にユーザーに知らせるものだ。さらに、睡眠の質をスコアとして可視化する機能も備わり、自身の睡眠状態を客観的に把握するためのインサイトを得ることができる。これらの高度な健康追跡機能は、複数のセンサーから得られるデータを統合的に分析するS10チップの処理能力があってこそ実現可能となったものである。
第3世代のApple Watch SEは、エントリーモデルという位置づけでありながら、S10チップという高性能な頭脳を得たことで、操作性、通信機能、健康管理といった多岐にわたる領域で飛躍的な進化を遂げた。特に、上位モデルの機能であった常時表示ディスプレイや高度なヘルスセンサーの搭載は、製品の価値を大きく引き上げている。この製品は、プロセッサ、センサー、ディスプレイといったハードウェアと、OSやアプリケーション、データ解析アルゴリズムといったソフトウェアが、いかに連携してユーザーに新たな体験や価値を提供するかを示す、システム開発を学ぶ上でも興味深い事例と言えるだろう。