【ITニュース解説】I counted every "I would pay" on Hacker News for 30 days. There were 350, and none of them was a customer.
2026年09月22日に「Dev.to」が公開したITニュース「I counted every "I would pay" on Hacker News for 30 days. There were 350, and none of them was a customer.」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Hacker Newsで30日間、「支払う」というコメント350件を分析した結果、ほとんどは議論の一環で、具体的な製品への購入意図を示すものや、連絡先を公開しているユーザーは皆無だった。これは、製品の需要を測る信頼できる指標ではないと結論づけた。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、新しいサービスや製品を開発する上で、「本当にその需要があるのか」を知ることは非常に重要だ。今回取り上げる記事は、まさにその需要の検証について、興味深いデータに基づいた分析を行っている。Hacker Newsという技術系コミュニティで頻繁に見られる「私ならXに料金を払うだろう」というコメントが、実際の顧客獲得につながるのか、という疑問を徹底的に調べた結果が報告されている。
この調査の目的はシンプルだ。公開の場で「Xにはお金を払う」と書かれたコメントが、将来の顧客になり得る「リード」と呼べるものなのかどうかを検証することである。多くの人は、このようなフレーズを需要の証拠として引用するが、実際にその数を数え、その実態を調査した例はこれまでほとんどなかった。この調査は、その実態を明らかにする試みとして非常に価値がある。
調査は、まずHacker Newsのコメントを対象に、「willing to pay」「i would pay」など、お金を払う意思を示す10種類のフレーズを検索することから始まった。ここで、データ収集における重要な技術的課題に直面した。Hacker Newsの検索APIを介してコメントを収集する際、当初は引用符を使わずにフレーズを検索していたため、意図した通りの結果が得られなかったのだ。例えば、「pay someone to」と引用符なしで検索すると、「pay」「someone」「to」という単語がコメント内のどこかにあれば全てヒットしてしまう。これにより、本来のフレーズとは無関係なコメントが大量に含まれてしまい、正確なデータが収集できなかった。
この課題を解決するためには、フレーズを正確に検索するために引用符で囲む必要があった。例えば、「”pay someone to”」のように検索すると、そのフレーズがそのまま含まれるコメントのみがヒットする。この修正によって、当初の検索結果が18件だったのに対し、30日間で350件ものコメントが抽出されることになった。これは、データ収集のプロセスにおいて、検索クエリのわずかな違いが結果にどれほど大きな影響を与えるかを示す良い例であり、正確な情報を得るためにはツールの特性を深く理解することが不可欠であることを示している。システム開発においても、利用するAPIやツールの仕様を正確に把握することは、正確なシステムを構築する上で欠かせない要素だと言える。
正確な方法で収集された30日間のデータには、合計で350件のユニークなコメントが含まれていた。これらのコメントは323人の異なる著者によって投稿されたものだった。次に、著者はこれらの「お金を払う」と言った人々が実際に連絡可能なのかを調べた。Hacker Newsの公開プロフィールを通じて、323人全員のプロフィールを読み込み、メールアドレスを公開しているかどうかを確認したのだ。その結果、メールアドレスを公開していたのは26人、全体のわずか8.0%に過ぎなかった。この数字は、唯一この調査の中で「有望」だと著者が感じた点である。なぜなら、連絡先がなければ、たとえ需要があったとしても、ビジネスとして具体的なアクションを起こすことができないからだ。
そして、この調査の核心となる最も重要な結果が明らかになった。350件のコメントを一つずつ内容を精査したところ、具体的な「何か」の提供を明確に示唆する言葉(データセット、API、CSV、データベースなど)が含まれているものは、わずか14件しかなかったのだ。さらに深く分析すると、これらの14件のうち13件は、料金設定や既存サービスの広告(Disney+の広告、Uberの料金、YouTubeの広告ブロッカーなど)についての議論の中で、「(この値段なら)払うだろう」といった形で使われていた。これは、実際の購買意図というよりも、意見表明や議論の道具として「お金を払う」という表現が使われていることを示唆していた。
最終的に、本当に「誰かが作れるであろう具体的なもの」を明確に要求し、かつ「お金を払う」と明言しているコメントは、350件中たった1件だけだった。その内容は、「特定のドメインの全ページをアーカイブとしてダウンロードできれば、お金を払う」というものだった。そして、先に「有望」だとされた、メールアドレスを公開している26人の著者の中から、具体的な購入希望を示している人を見つけようとしたが、そのような人物は一人もいなかった。つまり、「お金を払うと言った」「具体的な何かを求めている」「連絡先を残している」という三つの条件を全て満たす人は、この1ヶ月の調査期間中には一人もいなかったのである。
この結果は、「お金を払うだろう」というフレーズが、実際の購入意図を示すシグナルではなく、議論の中で使われる修辞的な表現に過ぎないことを強く示唆している。あるコメント投稿者もデータなしに同様の意見を述べていたが、この調査はデータに基づきその意見を裏付ける形となった。もしあなたが製品のアイデアを検証する際に、このようなコメントを頼りにしているのであれば、それは顧客の意見を測っているに過ぎず、実際の購買意図を測っているわけではない、ということを理解する必要がある。
唯一発見された具体的なリクエスト、すなわちWayback Machineからの大量データ取得の依頼については、著者は製品化しないことを決めた。なぜなら、Wayback Machineを運営するInternet Archiveは、まさにそのような大量の自動トラフィックによって負荷がかかっていると発表しており、その対策を講じている最中だったからだ。つまり、発見された唯一の需要は、提供元が公式に「やめてほしい」と表明している行為を助長するものであったため、著者はそれをビジネスにしないと判断したのだ。
この調査にはいくつかの限界があることも述べられている。例えば、Hacker Newsのコメントのみを対象としており、記事自体や質問投稿は含まれていないこと。また、調査したフレーズも10種類に限定されており、あらゆる支払い意図の表現を網羅しているわけではないこと。そして、プロフィールのメールアドレスが公開されていないからといって、完全に連絡不可能というわけではないが、今回はHacker Newsのルール内で明確に公開された情報に限定して調査を行っている。これらの限界を考慮に入れた上で、この調査結果は、新しい製品やサービスを開発しようとする際に、表面的な需要のシグナルを鵜呑みにせず、より深く、そして多角的にユーザーの意図を検証することの重要性を教えてくれる。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、顧客の真のニーズを理解することは、技術力と同じくらい、あるいはそれ以上に成功の鍵となるだろう。