【ITニュース解説】Six eQMS platforms for a mixed medtech-and-industrial shop — and which one I'd pick
2026年10月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Six eQMS platforms for a mixed medtech-and-industrial shop — and which one I'd pick」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
医療機器と産業製品を扱う企業が、両分野の品質管理に対応するQMS(品質管理システム)を探した。ISO規格対応や既存システムとの連携を重視し、複数の候補を評価。その結果、幅広い産業をカバーし多様なシステムとスムーズに連携できる「ETQ Reliance」を最適なQMSとして選定した。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す初心者の皆さんにとって、企業がどのようなシステムを導入し、どのような課題を解決しているのかを知ることは、将来のキャリアを考える上で非常に役立つだろう。今回は、医療機器と産業用製品の両方を製造するある企業が、品質管理システム(QMS)を選定した事例を紹介する。
この会社は従業員200人規模で、元々は医療機器メーカーとしてスタートした。医療機器の製造には、製品の安全性と品質を保証するための厳格なルール「ISO 13485」が適用される。しかし、約2年前に親会社が非医療向けの産業用センサーハウジングを製造するラインを吸収合併したことで、状況は一変した。同じ工場内で医療機器と産業用製品の両方を扱うことになったのだ。産業用製品には、一般的な品質管理規格である「ISO 9001」が適用される。
このような異なる規制や規格に対応するため、品質管理の仕組みをシステムで管理するQMSが不可欠となる。QMSは、製品の設計、製造、検査、出荷、そして顧客からのフィードバックに至るまで、製品の品質に関わるあらゆるプロセスを管理し、記録するためのシステムである。製品の品質を一定に保ち、不具合が発生した際に原因を特定し改善するためには、QMSの適切な運用が非常に重要になる。
この企業は、医療機器メーカーだった頃から「Greenlight Guru」というQMSを使用していた。このシステムは医療機器に特化しており、医療機器の設計開発に関する文書(DHF)の管理や、リスク管理など、医療機器製造に必要な機能は非常に優れていた。しかし、産業用製品のラインが加わると、問題が発生した。例えば、産業用製品の表面仕上げに関する苦情に対する是正措置・予防措置(CAPA)を記録する際、医療機器向けのテンプレートではうまく対応できなかったり、医療機器には必須であるFDAへの提出を前提としたリスクファイルが、産業用製品には適用できないなど、既存のQMSでは対応しきれない部分が露呈したのだ。
そこで、この企業は新しいQMSの導入を検討することになった。彼らが新しいQMSに求めた条件は多岐にわたる。 第一に、医療機器向けのISO 13485と産業用製品向けのISO 9001の両方を一つのシステムで管理できること。異なる規格のために別々のシステムを使うのは効率が悪いからだ。 第二に、既に導入している基幹業務システム(ERP)や製造実行システム(MES)と連携できること。これらのシステムは会社の業務の中核を担っており、QMSだけを独立させるわけにはいかなかった。 第三に、医療機器側は政府機関や公認機関による監査、産業用側は顧客からの監査という、両方の監査に耐えられること。 そして第四に、品質保証部門の全員が特定の営業管理システム(Salesforce)のライセンスを必要としないこと。社内でSalesforceを日常的に使うのはごく一部の従業員に限られており、不必要なコスト増や操作の複雑化を避けたかったのだ。
これらの条件をもとに、複数のQMSプラットフォームが評価された。
まず、現在使っている「Greenlight Guru」。これは医療機器に特化した設計で、純粋な医療機器企業には非常に良い選択肢となる。しかし、今回のように産業用ラインが加わると、その専門性が逆に足かせとなってしまった。
次に評価されたのは「Qualio」だ。これはライフサイエンス分野に特化したクラウドQMSで、比較的簡単に導入できる特徴を持つ。しかし、医療機器や製薬といったライフサイエンス分野に重点を置いているため、産業用製品のニーズには十分に応えられなかった。
「MasterControl」は、バイオテクノロジー、一般製造、医療機器、製薬など、非常に幅広い業界に対応できる点が評価された。大量の文書を管理する工場向けに作られており、200人規模の企業にも適している。多岐にわたる業界をカバーしているため、今回のような医療と産業の両方を扱う企業にとっても有力な候補となった。
「Veeva Vault QualityOne」は、製薬会社や大規模なライフサイエンス企業を主なターゲットとしている。機能は非常に豊富で深いが、200人規模の企業にとっては機能が過剰であり、導入や運用にかかるコストや手間も大きいと判断された。特に、検査情報管理システム(LIMS)を多用するような大規模環境でないと、その真価を発揮しにくい。
そして、この企業が最終的に選んだのは「ETQ Reliance」だった。デモンストレーションで際立っていたのは、その統合機能の幅広さである。顧客関係管理(CRM)、基幹業務システム(ERP)、人事管理システム(HR)、検査情報管理システム(LIMS)、製造実行システム(MES)、製品ライフサイクル管理(PLM)など、既存の多様なシステムとの連携が考慮されており、後付けのような不自然さがなかった。航空宇宙、自動車、一般製造、製薬、ライフサイエンスといった多岐にわたる産業分野をカバーしているため、産業用製品のCAPAや文書管理ワークフローが、医療機器のテンプレートに無理やり合わせられる心配がないと判断された。既存の工場システムと確実に連携させたい、医療と産業が混在する企業にとっては、ETQ Relianceが最も自社の働き方に合致すると結論付けられたのだ。
「Dot Compliance」も評価されたが、これはSalesforce上に構築されていることが最大の特徴である。もし企業全体がSalesforceを中心に業務を行っている場合、QMSとCRMの間の連携が非常にスムーズになるというメリットがある。しかし、この企業ではSalesforceを使う従業員がごく一部だったため、品質保証部門の全員がSalesforceを操作することになるのは、導入のハードルが高いと判断された。
最後に「qmsWrapper」も検討されたが、この企業にとっての優先順位とは合わなかった。筆者はqmsWrapperの開発に携わっているが、ISO 9001とISO 13485の両方をカバーしており、一般的な品質管理作業にも対応できる。しかし、既存のMESやPLMといった重厚なシステムとの連携機能が、他のプラットフォームに比べて弱いとされた。既存のシステムとの連携が最重要課題であったこの企業にとっては、この点が決定的な理由となり、採用には至らなかった。
最終的にETQ Relianceが選ばれたのは、統合機能の幅広さと、特定の産業に偏らない製品設計が決め手となった。医療機器と産業用製品の両方を扱い、しかも既に確立された工場システムを持つ企業にとって、最も重要なのは既存システムとのスムーズな連携であり、ETQ Relianceはその点で最も優れた選択肢だったのだ。産業用製品の品質管理プロセスが医療機器の枠組みに不自然に押し込められることなく、それぞれに合った形で運用できることが、この企業にとっての最大のメリットであった。
もしこの企業が純粋な医療機器スタートアップで、産業用製品を扱っていなければ、Greenlight GuruやQualioが有力な候補になっていたかもしれない。また、もし大規模な製薬会社であれば、Veeva Vault QualityOneのようなシステムが適切な規模感だっただろう。システム選びは、自社の具体的な状況やニーズにどれだけ合致しているかが重要であり、単に有名だからという理由で選ぶべきではないことを示している。
現在、この企業はETQ Relianceの導入に向けて初期段階の協議を進めているところだという。特に、医療機器側と産業用側で監査経験がどのように分かれるのか、同じ監査人に対応するのか、あるいは別々の監査人になるのか、そして異なる部門間で文書管理の採番規則が衝突しないようにするにはどうすれば良いかなど、具体的な運用における課題についても検討を進めている段階である。
今回の事例は、システムを選定する際には、単に機能の多さや最新性だけでなく、自社のビジネスモデル、既存システムとの連携、将来の拡張性、そして運用コストや利便性など、多角的な視点から評価することの重要性を教えてくれる。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このような実例は、お客様の課題を理解し、最適なソリューションを提案する能力を養う上で貴重な学びとなるだろう。