【ITニュース解説】Sloth Errands: an agent that does my web chores while I sleep, and asks before it pays
2026年10月23日に「Dev.to」が公開したITニュース「Sloth Errands: an agent that does my web chores while I sleep, and asks before it pays」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
「Sloth Errands」は、Web上の面倒な作業を自動化するAIエージェントだ。就寝中に図書館本の更新やジム予約などをクラウドブラウザで実行する。決済など危険な処理は、起床時にスマホで承認すると実行される安全設計。オープンソース技術で構築され、耐久性と信頼性が高い。
ITニュース解説
Sloth Errands(スロース・エランズ)は、私たちが日々の生活でうっかり忘れがちな、ウェブ上での面倒な雑用を自動でこなしてくれるシステムだ。例えば、図書館の予約本の延長、人気のジムの予約枠確保、荷物の配送状況確認、ソフトウェアの新しいリリースチェックといった、特定の時間に行う必要があるが、私たちが寝ている間や忙しい時間帯に発生しがちな作業を自動化する。これにより、延滞料金の発生や予約の取りこぼしを防ぎ、日々の負担を軽減することが開発の狙いである。
ユーザーは寝る前に、任せたい雑用を専用のボード上で選択する。このボードは、まるで駅の発車案内板のように、各雑用の状況をリアルタイムで表示する。選択された雑用は、その後、クラウド上で動作する「エージェント」と呼ばれるプログラムによって実行される。このエージェントは、公開されているAIモデルを基盤として構築されており、インターネット上のウェブブラウザを操作することで、人間が手作業で行うのと同じようにウェブサイトを巡回し、必要な操作を実行する。
Sloth Errandsの処理には、安全な雑用、時間のかかる雑用、危険なステップの3種類がある。まず、「安全な雑用」は、本の延長や予約枠の確保、情報読み取りなど、システムが単独で完結できる操作だ。これらはエージェントが自動で最後まで処理し、完了させる。次に、「時間のかかる雑用」は、例えば予約開始時刻がまだ来ていない場合や、ウェブサイトが一時的にダウンしている場合などが該当する。エージェントは一度失敗してもすぐに諦めず、時間をおいて複数回再試行する仕組みを持っており、ウェブサイトの状況が変化するのを待って最終的に雑用を完了させる。そして最も重要な特徴が「危険なステップ」への対応だ。これは、例えば「図書館の延滞料金を支払う」といった、金銭のやり取りを伴う慎重な判断が必要な操作である。エージェントはこのようなステップに到達すると、自動ではクリックせずに処理を一旦停止し、ユーザーの承認を待つ。ユーザーが目覚める時間になると、スマートフォンにプッシュ通知が届き、ユーザーがその操作を承認すると、エージェントは初めてその「危険なステップ」を実行する。これにより、ユーザーは意図しない支払いのリスクを避けつつ、安全にウェブ上の雑用を自動化できる。
このシステムのデモでは、実際に夜間に複数の雑用が実行される様子が示された。サイトの一時的な不具合に対してエージェントが再試行を重ねて完了させる様子や、支払いの承認が必要な場合に、エージェントを停止して再起動しても承認待ちの状態が維持されることが確認できる。これは、システムの耐久性や信頼性を示すもので、ユーザーがスマートフォンで承認するまで状態が変わらない。
Sloth Errandsは様々な技術要素を組み合わせて構築されている。まず、ウェブサイトの情報を読み取り、どのような行動を取るべきかを判断する「頭脳」の役割を果たすのが、「gpt-oss」という公開されたAIモデルである。これはGroqというサービス上で提供され、比較的低コストで利用できる。次に、AIにウェブサイトを操作するための具体的な「道具」を与え、その行動を制御するフレームワークとして「Mastra」が使われている。Mastraエージェントは、ウェブページを開いたり、情報を読んだり、ボタンをクリックしたり、入力したりといったツールを持つ。特に重要なのは、エージェントが「支払う」「購入」といった危険な操作を実行しようとした場合、Mastraがそれを自動で拒否し、ユーザーに承認を求めるように指示する「安全ルール」がコードレベルで組み込まれている点だ。
実際のウェブサイト操作は「Browserbase」と「Stagehand」という技術を使って、クラウド上のウェブブラウザで行われる。各ウェブサイトのログイン情報はBrowserbaseに安全に保存されるため、エージェントはパスワードを直接知ることなく、常にログイン済みの状態で作業を開始できる。また、Browserbaseはすべての操作履歴を記録するため、エージェントが夜間にどのような操作をしたかを後で確認できる監査証跡も提供する。
システムの耐久性と、時間のかかる処理や再試行を確実に実行するための重要な要素が「Temporal」というワークフローエンジンだ。各雑用はTemporalの「ワークフロー」として定義され、ウェブサイトがダウンしている場合の再試行、予約開始まで待機する処理、ユーザーの承認を待つ処理など、すべての待機や再試行がこのTemporalによって管理される。これにより、エージェントを実行するプログラムが途中で停止しても、処理の状態が失われることなく、再開後に中断した場所から処理を続けることが可能となる。これは、長時間にわたる自動化プロセスにおいて極めて重要な機能である。
ユーザーが危険な操作を承認するためのシステムには、「Auth0 for AI Agents」が使われている。ユーザーがウェブアプリにログインする際にAuth0が利用され、支払いのようなリスクのある操作が発生した際には、Auth0の「Client-Initiated Backchannel Authentication (CIBA)」という仕組みを通じて、ユーザーのスマートフォンに「Auth0 Guardian」アプリからプッシュ通知が送られる。ユーザーはその通知を通じて、安全に承認または拒否の操作を行うことができる。
ユーザーインターフェースとしてのボードは、Next.jsとTailwindを使って開発されており、駅の発車案内板のようなデザインで、各雑用のステータス(ON TIME、DELAYED、HELD FOR YOU、DONE)がリアルタイムに表示される。
開発の過程ではいくつかの課題も発生した。例えば、AIモデルが一度に処理できる情報量には限りがあるため、長大なウェブページを処理する際には、必要な部分だけを切り出す工夫が必要だった。また、再試行時にAIが以前の試行で何が完了したかを忘れてしまい、すでに完了した操作を再度実行しようとする問題も生じた。これに対しては、以前の試行で部分的に完了した可能性があることをAIに伝える仕組みを導入した。
このSloth Errandsが「オープンイノベーション」によって構築されている点も非常に重要である。ウェブサイトを巡回するエージェントは、予約状況の確認など、価値は小さいが頻繁なAIモデルの呼び出しを必要とする。オープンなAIモデルを使うことで、このような頻繁な呼び出しも無料ティアで賄うことが可能であり、もし無料サービスが終了しても、同じモデルを他のプラットフォームや自身のハードウェアで実行できるため、エージェントを書き直す必要がない。閉鎖的なAPIでは、呼び出し回数を常に気にし、価格変動のリスクも考慮しなければならない。さらに、オープンな技術は「信頼性」を高める。このエージェントはユーザーのログイン情報を管理し、支払いボタンにアクセスする能力を持つため、その安全性は極めて重要だ。オープンソースのスタックを使用することで、モデルから実際の操作に至るまでのすべてのコードを開発者自身が確認できる。特に、危険なクリックをブロックする安全ルールは、わずか10行程度のコードとして開発者のリポジトリに存在し、開発者はシステムが安全に動作していることを自分で確認し、信頼できるガードレールを設置できる。
Sloth Errandsは、多くの面倒な作業を自動化し、重要な判断のみを人間に委ねることで、日々の生産性を向上させ、精神的な負担を軽減する。このように、賢く信頼性の高い自動化システムは、これからのITサービスにおいてますます重要になっていくだろう。