【ITニュース解説】From Spec to Deploy: Building an Expense Tracker with SpecKit
2025年09月28日に「Dev.to」が公開したITニュース「From Spec to Deploy: Building an Expense Tracker with SpecKit」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
SpecKitを活用した「仕様駆動開発」で支出管理アプリを開発した事例。開発の原則設定から要件定義、技術選定、タスク化、実装まで5ステップで進める。これにより、早い段階で問題を検出し、手戻りを減らし、高品質なアプリを効率的に構築できると示す。
ITニュース解説
AI(人工知能)を活用したソフトウェア開発は、近年非常に注目されている。開発者はAIに「こんなアプリを作ってほしい」と指示するだけで、コードを生成してもらえる夢のような話だ。しかし、実際にAIに漠然とした指示を出すだけでは、思ったような結果が得られないことが多い。具体的に何を作りたいのかが不明確だと、AIも最適なコードを生成できず、何度も修正を繰り返したり、開発の途中で機能がどんどん増えてしまったりして、結局は時間と労力がかかってしまうという課題があった。
こうした課題を解決し、より効率的で質の高いAI開発を目指すために「SpecKit」という新しいアプローチが登場した。SpecKitは、コードを書き始める前に、まるで未来のコードと会話するように、徹底的に「何を」「なぜ」作るのかを明確にする「仕様駆動開発」という考え方をAI開発に持ち込んだツールだ。これは、設計図なしで家を建て始めるのではなく、最初に詳細な設計図をしっかり作り上げることに似ている。
SpecKitを用いた開発は、主に以下の5つのステップで進められる。それぞれのステップが、前のステップの内容を検証し、問題があれば早期に発見・修正することで、開発の途中で大きな手戻りが発生するのを防ぐ役割を果たす。
最初のステップは「憲法(constitution)」の設定だ。ここでは、プロジェクト全体で守るべき品質やテストの基準、ユーザー体験(UX)に関する原則など、プロジェクトの「非交渉の原則」を定める。例えば、「TypeScriptの厳格モードを常に使う」「テストコードで80%以上の機能がカバーされていること」「ユーザーインターフェースは一貫性があり、エラーメッセージは明確であること」といった具体的なルールを最初に決めておく。これらは、開発が進むにつれて自動的に品質を保証するゲートとして機能し、後に「修正すればいいや」という安易なコードが生まれるのを防ぐ。
次に「仕様(specify)」を定義する。このステップでは、何を作るのか、それがユーザーにとってなぜ価値があるのか、という点に集中する。技術的な実装方法についてはここでは考えない。例えば、「ユーザーは収入と支出を記録できる」「支出をカテゴリー分けできる」「月ごとの利用状況を要約して表示する」といった、ユーザーが実際に利用する機能を具体的に記述する。この時、仕様はビジネスの言葉で、かつテストしやすいように明確に表現される。この段階で、例えば家計簿アプリの場合、16個の具体的でテスト可能な要件が明確になった。
仕様が固まったら、いよいよ「計画(plan)」のステップに入る。ここで初めて、どのような技術(プログラミング言語、フレームワーク、データベースなど)を使ってシステムを構築するかを決める。前のステップで決めた仕様を満たすために最適な技術スタックを選定するのだ。筆者の家計簿アプリの場合、フロントエンドにはReact 19とTypeScript、バックエンドにはNestJSとSQLite、認証にはJWT、グラフ表示にはNivoといった具体的な技術が選ばれた。SpecKitは、これらの情報と仕様に基づいて、システムの主要な構成要素(エンティティ)や、システムが提供する機能(APIエンドポイント)、そして具体的な開発タスクを生成する。
そして、「タスク(tasks)」のステップでは、前の計画ステップで生成された情報をもとに、実行可能な細かいタスクリストが作成される。例えば、「プロジェクトの初期設定を行う」「データベースのスキーマを定義する」「ログイン機能のAPIを作成する」といった具体的な作業項目が、一つ一つ番号付けされてリストアップされる。このリストは、開発者が迷うことなく作業を進めるためのガイドとなる。筆者の家計簿アプリ開発では、プロジェクトのセットアップ、テストコードの作成、データベースとモデルの構築、バックエンドAPIの開発、フロントエンドコンポーネントの作成、そして最終的な調整と最適化といった順序でタスクが細分化された。
最後のステップは「実装(implement)」だ。ここでは、前のステップで生成されたタスクリストと、設定した憲法や仕様に従って、実際にコードを書いていく。特に重要なのは「テストファースト開発(TDD)」というアプローチを実践した点だ。これは、まず機能が意図通りに動かないことを示すテストコードを書き、そのテストが成功するように実際のコードを書く、という手法だ。これにより、開発の早い段階で細かな問題点や想定外のケース(エッジケース)を発見し、修正することができた。例えば、家計簿アプリで異常な支出を検知する機能を作る際も、まず異常な支出パターンを検出するテストを書き、それに合格するようなロジックを実装することで、想定通りの動作を確実に実現した。
このようにSpecKitのアプローチで開発された家計簿アプリは、堅牢な認証機能、スマートなカテゴリー分けが可能な取引の登録・編集・削除、リアルタイムな進捗バー付きの予算追跡、支出傾向を示すインタラクティブなグラフ、そして通常の支出パターンから逸脱した異常な取引を知らせる異常検知機能、さらに実用的な財務インサイトを提供する月次レポートなど、多岐にわたる機能を備えた。技術的にも、TypeScriptによるエンドツーエンドの型安全性が確保され、React 19やNestJSといった最新の技術スタックが活用されている。
この開発アプローチが成功した最大の理由は、品質ゲートが機能し、技術的な負債(後で問題となる未処理のコードや設計)が生産環境に到達するのを防いだことにある。また、テストファースト開発が実際に効果を発揮し、通常では見落としがちなエッジケースを早期に発見できたことも大きい。さらに、開発の初期段階で徹底的な計画を立てることで、後からの大幅な手戻りや、「今何を作っているのか」といった迷いが減り、結果として開発全体のスピードが向上した。もちろん、初期設定でいくつか課題に直面したり、AIが生成したコードに微調整が必要な場面もあったが、SpecKitによってすべての決定履歴とコンテキストが維持され、プロセス全体はスムーズに進んだという。SpecKitは、AIを活用した開発において、単にコードを生成するだけでなく、そのコードが「正しい」ものを「効率的に」作り出すための強力なフレームワークを提供していると言える。