【ITニュース解説】Valkey vs Redis in 2026: The Fork Quietly Won Most of the Market
2026年10月05日に「Dev.to」が公開したITニュース「Valkey vs Redis in 2026: The Fork Quietly Won Most of the Market」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
2024年のRedisライセンス変更を機に誕生したValkeyが、2026年には多くのOSやクラウドでデフォルトのデータストアとなった。Valkeyは優れた性能とコスト効率、自由なライセンスが強み。一方、Redisは一部の高度な機能モジュールで優位性があるが、新規開発ではValkeyが有力な選択肢である。
ITニュース解説
最近、システムエンジニアを目指す皆さんが耳にする機会が増えている「Valkey」と「Redis」という二つのデータストアについて、その現状と選択のポイントを解説する。かつてインメモリデータストアの代名詞とも言えたRedisは、そのライセンス変更をきっかけに、Valkeyという新たな選択肢を生み出した。そして、そのValkeyはわずか数年で、多くの主要なプラットフォームでデフォルトの選択肢となるまでに成長した。
この変化の最も大きな要因は、技術的な違いではなく「ライセンス」、つまりソフトウェアの使用許諾契約にある。元々Redisは、BSD 3-Clauseという非常に自由度の高いライセンスで提供されていたため、多くの企業やクラウドプロバイダーに広く利用されてきた。しかし、2024年3月にRedis Ltd.は、バージョン7.4以降のRedisについて、RSALv2またはSSPLv1という新たなデュアルライセンスへと変更することを発表した。これらのライセンスは、クラウドプロバイダーがRedisをマネージドサービスとして提供する際に、商業的な契約を必要とするもので、事実上、これまでの自由な利用を制限する内容だった。
この変更に対し、わずか数日のうちに、Linux FoundationがRedis 7.2.4を基に「Valkey」をフォーク(元のプロジェクトから派生して別の開発ラインを立ち上げること)した。ValkeyはBSDライセンスを維持し、AWS、Google Cloud、Oracle、Ericssonといった大手企業がその開発を支援することになった。その後、2025年5月にはRedisもAGPLv3という新たなライセンスオプションを追加し、これによりRedisは再び「オープンソース」の定義を満たすようになった。しかし、この一連の動きが、市場でのValkeyの優位性を確立するきっかけとなった。現在、UbuntuやDebianといった主要なOS、Homebrewのようなパッケージマネージャー、そしてAWS ElastiCacheといったクラウドサービスでは、新たにRedisをインストールしようとすると、デフォルトでValkeyが導入されるようになっている。
それでは、両者の性能にはどのような違いがあるのだろうか。Valkeyはフォーク後、積極的な性能改善に取り組んできた。例えば、Valkey 8.0では接続処理と書き込みバッファのフラッシュを専用のI/Oスレッドに分離し、Valkey 8.1ではハッシュテーブルの設計を見直すことでメモリ使用量を削減した。さらにValkey 9.0では、パイプラインメモリのプリフェッチやSIMD加速(CPUの特殊な命令セットを使って高速化すること)といった最適化を導入している。具体的なベンチマークによると、Redis 8.2とValkey 8.1を比較した場合、単一コマンドでのSETやGETのスループットはValkeyが約8%高い。特に複数のコマンドをまとめて一度に送る「パイプライン処理」においては、ValkeyのスループットがRedisに比べて約40%も向上している。また、負荷がかかった状態でのP99レイテンシ(ほとんどの応答がこの時間内に収まるという目安)もValkeyが33%低い。メモリ使用量もValkeyの方が効率的だ。アプリケーションがコマンドを一つずつ発行する場合、8%程度の差はアーキテクチャの変更を促すほどではないかもしれないが、レイテンシが重視される処理でコマンドをバッチ処理する場合、40%という性能差はシステムの設計に大きな影響を与える可能性がある。
性能向上は、結果としてコスト削減にもつながる。Snap社の事例では、Valkeyへの移行により年間210万ドルかかっていたインフラ費用が84万ドルへと、実に60%も削減された。この削減は、Valkeyがライセンス費用を必要としないこと、スループットの向上により必要なサーバーノード数を削減できたこと、そしてメモリ効率の改善により再バランスの手間が減ったことによるものだ。大規模なシステムだけでなく、小規模なプロジェクトでも同様のメリットが得られる可能性があり、AWS ElastiCacheではValkeyインスタンスがRedisインスタンスよりも約20%安価に設定されている。
一方で、RedisにはValkeyにはない強みも存在する。Redis 8では、JSONデータの操作、時系列データの処理、高度な検索エンジン、ベクトルデータベース、さらには確率的データ構造(Bloom filter、Cuckoo filter、Top-K、T-Digestなど)といった「Redis Stack」の機能が本体に統合された。Valkeyもこれらの機能の一部をモジュールとして提供しているが、その機能範囲は完全ではない。特に検索機能では、Valkeyの検索モジュールは基本的なコマンドに限定されており、オートコンプリートやシノニム、関連度ランキングといった高度な機能は利用できない。また、Cuckoo filterやTop-K、T-Digestといった一部の確率的データ構造は、Valkeyでは全くサポートされていない。もし皆さんのプロジェクトでこれらの特定の高度な機能が必要な場合、Redisを選ぶべき明確な理由となる。
ライセンスの問題は、クラウドプロバイダーだけでなく、開発チーム自身の所属する企業の法務部門にとっても重要な判断基準となる。ValkeyのBSD 3-Clauseライセンスは非常に許容度が高く、利用方法や再配布に関する厳しい制限がないため、企業のポリシーに適合しやすい。一方、RedisのRSALv2はマネージドサービス提供を制限し、SSPLv1は修正したコードの公開義務を伴う強いコピーレフトライセンスだ。そしてAGPLv3は、修正したソースコードをネットワーク経由で提供した場合に、その修正部分も公開する義務が生じる可能性のある、これも強いコピーレフトライセンスである。多くの企業はAGPLライセンスへの依存を避けるためのポリシーを持っていることがあり、このポリシーが技術的な判断とは無関係にValkeyを選択させる大きな要因となることがある。
両者間の移行は非常に容易であることも知っておくべきだ。ValkeyはRedisの通信プロトコルをそのまま継承しており、Redisのデータファイル(AOFやRDB)を読み込むことができる。主要なクライアントライブラリもValkeyと互換性があり、既存のアプリケーションコードをほとんど変更することなくValkeyに接続できる。Docker Composeの設定でイメージ名を変更するだけで動作するほどだ。ダウンタイムなしでの移行も、Redisのレプリケーション(データの複製)と同様の手順で行うことができる。ただし、前述の特定のモジュール機能を使っている場合は、互換性の違いに注意が必要だ。
結論として、2026年現在、多くの新規プロジェクトにおいて、Valkeyはデフォルトの選択肢となりつつある。キャッシュ、セッションストア、レートリミッター、Pub/Subブローカーといったコアなデータ構造を利用する用途では、Valkeyの優れた性能、コストメリット、そして自由なライセンスが大きな魅力となる。特にAWSやGCPのマネージドサービスを利用する場合、Valkeyがデフォルトであり、より低コストで提供されている。しかし、Redis 8で統合されたTime Series、高度な検索機能、ベクトルセット、Cuckoo/Top-K/T-Digestといった特定のモジュールに依存するシステムでは、Redisを選択するのが適切である。既存のRedis Enterpriseライセンスを保持している場合や、Azure Cache for Redisを利用している場合も、引き続きRedisが有利となる。状況によっては、ValkeyとRedisを併用し、それぞれの強みを活かすことも可能だ。この急速な市場の変化は、今後もValkeyの検索モジュールの進化や、Redisがコミュニティ版への投資をどのように続けるかによって、さらに多様な展開を見せるだろう。