【ITニュース解説】How do you debug something that is allowed to be wrong?
2026年09月11日に「Dev.to」が公開したITニュース「How do you debug something that is allowed to be wrong?」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
「間違っても許される」AIシステムのエラーは、AIモデル自体よりキャッシュや読み込み順序などシステム側の問題が多い。デバッグでは、ログを鵜呑みにせず、エラーの許容範囲や検出期間を明確にする。検証ツールも正確性を保つ必要がある。
ITニュース解説
現代のシステム開発では、人工知能(AI)を活用する場面が急速に増えている。AIは非常に便利な一方で、従来のプログラムとは異なる特性を持つため、システムのエラー(バグ)を見つけ出し、修正する「デバッグ」の方法も新たな視点が必要になっている。特に、AIの特性上「間違っても良い」と許容される部分があるシステムでは、そのデバッグはさらに複雑だ。
ある時、筆者が開発したシステムが、本来なら一つの段落しか生成しないはずなのに、同じ記事の草稿に70もの段落を作成してしまったという事例があった。これは大きな問題だ。初めはAI(モデル)が間違ったのではないかと疑われたが、詳しく調べてみると、意外な原因が判明した。システムが段落を作成するたびに、その結果を「読み戻して確認する」という仕組みになっていたのだが、この読み戻しがキャッシュ(一時的なデータ保存場所)から古い情報を繰り返し取得していたのだ。そのため、AIは「まだ段落が作成されていない」と誤解し、新しい段落を生成し続けてしまった。つまり、AI自体は与えられた指示通りに動いており、問題はAIに指示を与えるシステム側の「読み込み順序」や「キャッシュ」の扱いにあったのだ。
このようなAIが絡むシステムのエラーを解決するには、従来のデバッグの考え方を変える必要がある。単に「システムが間違っているかどうか」を問うだけでは不十分だ。筆者は、以下の3つの質問を順番に問いかけることで、効果的なデバッグができると提唱している。
1. 何が間違っても許されるのか? まず、システムがどのような「間違い」であれば許容され、どのような「エラー」は絶対に許されないのかを明確に書き出すことが重要だ。例えば、AIが生成する文章に少し不正確な表現が含まれる程度であれば許容範囲だが、公開されている記事の内容が勝手に書き換えられたり、重要なデータが破損したりするのは絶対に許されないエラーだろう。この許容範囲を具体的に書き出す作業自体が、これまで気づかなかった潜在的なリスクや、重大なエラーに対する検出器(エラーを検知する仕組み)が不足していることに気づかせてくれる。実際に筆者がこの作業を行った際、「絶対に許されない」と分類されたエラーの半分に、それを検出する仕組みが用意されていなかったという衝撃的な事実が明らかになった。
2. どのレイヤーが間違ったのか? エラーが発生した時、私たちはついAI(モデル)のせいにしがちだ。しかし、過去の多くの事例を分析すると、AI自体が直接的な原因であることは非常に稀だとわかる。多くの場合、エラーはAIを取り巻く他のシステム要素、例えば「設定ミス」「AIを動かす実行環境(ハーネス)の問題」「外部サービスとの連携ルール(ツール契約)の不備」「サーバーやネットワークなどのインフラの障害」「古い情報を返すキャッシュ」といった異なるレイヤーで発生している。
デバッグを行う際は、この点を意識して優先順位をつけるべきだ。まず確認すべきは「データや認証情報が正しかったか」であり、次に「ツールやキャッシュが正しい情報を返したか」。その後に「AIを動かすループやスケジューラーが意図した通りに動作したか」を確認する。AI(モデル)自体は、検証が難しく、結果が非決定論的(同じ入力でも毎回異なる結果を出す可能性がある)なため、最後に確認すべきレイヤーだと考えるべきだ。AIより上位のレイヤーは、比較的容易に、そして決定論的に検証できることが多い。
3. エラーはどのくらいの間存在していたのか? エラーの発生率そのものよりも、エラーが「どのくらいの期間、システム内に存在していたか」、つまり「検出されるまでの時間」が重要だ。エラーが長期間見過ごされれば、それだけシステムへの影響や被害は大きくなる。例えば、古い情報が61秒間キャッシュに残るエラー、ログの読み間違いで数時間気づかなかったエラー、あるいは17日間も誰も気づかなかったツールの不具合など、エラーが長く潜伏する事例は数多くある。
この「エラーが存在する期間」を短縮することが、システム運用の重要な目標となる。エラー発生率を下げるだけでなく、検出器の精度を高め、エラーを迅速に発見できる仕組みを構築することが、システム全体の信頼性を向上させる鍵となる。そのためには、単にログを記録するだけでなく、「どのようなエラーを、どのくらいの時間で検出できているか」という視点で、定期的にシステムを評価する必要がある。
デバッグ情報の落とし穴:記録と現実のギャップ デバッグを行う上で、AIの「実行記録(トランスクリプト)」は非常に重要な情報源となるが、これを全面的に信頼してはならない。トランスクリプトは、AIが何を「受け取り」、何を「出力したか」を示すが、「実際にシステム内で何が起こったか」の全てを記録しているわけではないからだ。例えば、削除処理が成功したとトランスクリプトに記録されていても、キャッシュが原因で、その直後の読み込みでは削除されたはずのデータが返されてしまうような状況がある。記録上は問題ないように見えても、現実のシステムの状態は異なっている可能性があるのだ。
さらに、エラーを見つけるために使う「デバッガー」や「検証ツール」自体も、常に正しいとは限らない。デバッグ用のスクリプトにバグがあったり、検証ロジックが不安定だったりすると、正しいエラーを見つけられなかったり、誤った情報を伝えてしまったりする。そのため、エラーを検証するツール(ベリファイア)こそ、最初にその正確性を徹底的に検証し、「固定化(フリーズ)」しておくべきだ。システムの信頼性を保証する上で、検証ツールは最も重要な基盤となる。
AIがシステムの中核を担う現代において、システムエンジニアには、単にコードのバグを直すだけでなく、システム全体を俯瞰し、AIとそれを囲む環境の相互作用を深く理解する能力が求められる。AIの「間違い」を許容しつつも、その許容範囲を明確にし、迅速にエラーを検出し、その影響を最小限に抑えるための強固な仕組みを構築することが、これからのシステム開発において非常に重要な課題となるだろう。