【PHP8.x】__sleepメソッドの使い方

Copy
1<?php
2
3/**
4 * Dom\DocumentFragmentに関連するオブジェクトのシリアライズを示すクラス。
5 *
6 * PHPのDom\DocumentFragmentクラス自体には__sleepメソッドは定義されていません。
7 * この例は、__sleepマジックメソッドの一般的な動作と、
8 * Dom\DocumentFragmentのようなオブジェクトを保持する際のシリアライズの考慮事項を示します。
9 *
10 * キーワードの 'sleep' (プログラムの実行を一時停止する関数) は、
11 * PHPのオブジェクトシリアライズに関する__sleepマジックメソッドとは機能的に異なります。
12 */
13class MyDomFragmentHolder
14{
15    public string $id;
16    // Dom\DocumentFragmentは複雑なリソースであり、直接シリアライズ・デシリアライズするのは困難な場合があります。
17    // そのため、__sleepメソッドでシリアライズ対象から除外することが一般的です。
18    private ?Dom\DocumentFragment $fragment = null;
19    public string $description; // このプロパティはシリアライズ対象から除外する例
20
21    public function __construct(string $id, string $description)
22    {
23        $this->id = $id;
24        $this->description = $description;
25        // 実際にはここでDom\DocumentFragmentを初期化できますが、
26        // シリアライズとの関連を示すため、デシリアライズ時に再構築するシナリオを想定します。
27        // $this->fragment = new Dom\DocumentFragment();
28        // $this->fragment->appendXML('<div>Hello Fragment</div>');
29    }
30
31    /**
32     * オブジェクトがシリアライズされる際に呼び出されます。
33     * シリアライズするプロパティの名前を文字列の配列で返します。
34     *
35     * @return array<string> シリアライズするプロパティの名前の配列
36     */
37    public function __sleep(): array
38    {
39        // 'fragment' プロパティと 'description' プロパティはシリアライズ対象から除外します。
40        // これにより、シリアライズデータがコンパクトになり、リソースの再初期化を制御できます。
41        return ['id'];
42    }
43
44    /**
45     * オブジェクトがデシリアライズされた直後に呼び出されます。
46     * シリアライズされなかったプロパティの再初期化などに使用します。
47     */
48    public function __wakeup(): void
49    {
50        // デシリアライズ後に fragment プロパティを再初期化
51        $this->fragment = new Dom\DocumentFragment();
52        // 必要に応じて、ここで fragment に内容を追加することもできます
53        // $this->fragment->appendXML('<div>Reinitialized Fragment</div>');
54        echo "オブジェクトがデシリアライズされ、Dom\\DocumentFragmentが再初期化されました。\n";
55    }
56
57    /**
58     * Dom\DocumentFragmentインスタンスを取得します。
59     *
60     * @return Dom\DocumentFragment|null
61     */
62    public function getFragment(): ?Dom\DocumentFragment
63    {
64        return $this->fragment;
65    }
66}
67
68// --- サンプルコードの実行 ---
69
70// 1. オブジェクトの作成
71$originalObject = new MyDomFragmentHolder('frag-001', 'これは重要な断片です。');
72echo "元のオブジェクトの状態:\n";
73echo "  ID: " . $originalObject->id . "\n";
74echo "  Description: " . $originalObject->description . "\n";
75echo "  Fragment初期状態: " . ($originalObject->getFragment() ? '初期化済み' : '未初期化') . "\n\n";
76
77// 2. オブジェクトをシリアライズ
78// __sleep() メソッドが呼び出され、'id' プロパティのみがシリアライズ対象となります。
79$serializedString = serialize($originalObject);
80echo "シリアライズされた文字列:\n";
81echo $serializedString . "\n\n";
82
83// 3. オブジェクトをデシリアライズ
84// __wakeup() メソッドが呼び出され、fragment プロパティが再初期化されます。
85$unserializedObject = unserialize($serializedString);
86echo "\nデシリアライズされたオブジェクトの状態:\n";
87echo "  ID: " . $unserializedObject->id . "\n";
88// 'description' はシリアライズされなかったので、デシリアライズ後には存在しません。
89echo "  Description: " . (isset($unserializedObject->description) ? $unserializedObject->description : 'N/A (シリアライズ対象外)') . "\n";
90echo "  Fragment最終状態: " . ($unserializedObject->getFragment() ? '再初期化済み' : '未初期化') . "\n";
91
92?>

PHPの__sleepメソッドは、オブジェクトが文字列形式に変換される「シリアライズ」の直前に自動的に呼び出される特別なメソッドです。このメソッドは引数を取らず、シリアライズしたいプロパティの名前を文字列の配列として返します。戻り値の配列に含まれないプロパティはシリアライズされず、保存対象から除外されます。

Dom\DocumentFragmentのような複雑なオブジェクトは、そのままシリアライズすると問題が生じやすいため、__sleepを使ってシリアライズ対象から除外するのが一般的です。その場合、オブジェクトが復元される「デシリアライズ」の際に自動的に呼び出される__wakeupメソッドを利用して、除外されたプロパティを再初期化します。

サンプルコードのMyDomFragmentHolderクラスは、__sleepメソッドでidプロパティのみをシリアライズ対象とし、fragmentやdescriptionといったプロパティを除外しています。これにより、シリアライズデータは最小限に抑えられ、デシリアライズ時には__wakeupによってDom\DocumentFragmentが適切に再構築される様子を示しています。

これは、プログラムの実行を一時停止させるPHPのsleep()関数とは異なり、オブジェクトの保存と復元を制御するための機能であることをご注意ください。