【PHP8.x】__sleepメソッドの使い方
__sleepメソッドの使い方について、初心者にもわかりやすく解説します。
基本的な使い方
__sleepメソッドは、DOMDocumentFragmentオブジェクトをシリアライズする際に呼び出される特別なメソッドです。
PHPには、オブジェクトの状態を文字列に変換して保存したり、ネットワーク経由で転送したりする機能があり、これを「シリアライズ」と呼びます。__sleepメソッドは、このシリアライズ処理が実行される直前に自動的に呼び出されるマジックメソッドの一つです。通常、このメソッドは、オブジェクトのどのプロパティをシリアライズの対象とするかを指定するために使用されます。これにより、不要なデータを除外したり、シリアライズ前に特定の準備処理を行うことができます。
しかし、DOMDocumentFragmentクラスは、XMLやHTMLのドキュメントの断片を表現するためのオブジェクトであり、その内部ではPHPが直接管理できないC言語レベルの複雑なデータ構造(DOMノードツリーなど)を保持しています。このような内部的なリソースを持つオブジェクトは、PHPの標準的なシリアライズ機構では正しく保存することができません。
そのため、DOMDocumentFragmentのインスタンスをserialize()関数でシリアライズしようとすると、通常はエラーが発生し、オブジェクトの状態を正しく保存することはできません。__sleepメソッドは、このようなシリアライズできないオブジェクトに対しては実質的な意味を持たず、呼び出されたとしても、オブジェクトの状態を保存する目的では機能しません。システムエンジニアとして、DOMDocumentFragmentのような内部リソースを持つオブジェクトはシリアライズに適さないことを理解しておくことが重要です。
構文(syntax)
1public function __sleep(): array 2{ 3 return ['propertyName1', 'propertyName2']; 4}
引数(parameters)
引数なし
引数はありません
戻り値(return)
戻り値なし
戻り値はありません
サンプルコード
PHP __sleep でDOMFragmentを安全にシリアライズする
1<?php 2 3/** 4 * DOMDocumentFragment クラスの __sleep メソッドの例 5 * 6 * DOMDocumentFragment はシリアライズされる際に、このメソッドが呼ばれる。 7 * シリアライズ対象から除外したいプロパティを指定できる。 8 * 9 * sleep 関数 (ミリ秒単位でのsleepはサポートされていません) とは異なります。 10 */ 11class MyDOMDocumentFragment extends DOMDocumentFragment { 12 private $data; 13 14 public function __construct() { 15 parent::__construct(); 16 $this->data = "Sensitive data"; 17 } 18 19 public function __sleep(): array 20 { 21 // シリアライズ時に $data プロパティを除外する 22 return []; // シリアライズするプロパティがない場合 23 //return ['otherProperty']; // $otherProperty のみシリアライズする場合 24 } 25 26 public function __wakeup(): void 27 { 28 // デシリアライズ後の処理 (必要に応じて実装) 29 // 例: データベース接続の再確立 30 // $this->data = "Default Value"; // デフォルト値を設定 31 } 32 33 public function setData(string $data): void { 34 $this->data = $data; 35 } 36 37 public function getData(): string { 38 return $this->data; 39 } 40} 41 42// 使用例 43$doc = new DOMDocument(); 44$fragment = new MyDOMDocumentFragment(); 45$fragment->appendXML('<p>This is a fragment.</p>'); 46$fragment->setData("My Secret"); 47 48$serialized = serialize($fragment); 49 50$unserialized = unserialize($serialized); 51 52echo "Original Data: " . $fragment->getData() . PHP_EOL; //Original Data: My Secret 53 54if ($unserialized instanceof MyDOMDocumentFragment) { 55 echo "Unserialized Data: " . $unserialized->getData() . PHP_EOL; // Unserialized Data: Sensitive data 56 57 // sleep で data がシリアライズされなかったため、wakeup での処理がないので、コンストラクタで初期化した時の値となる。 58} 59 60// sleep 関数の利用 (ミリ秒単位のsleepは PHP ではサポートされていません) 61// sleep(1); // 1秒間スリープ
PHPのDOMDocumentFragmentクラスにおける__sleepメソッドは、オブジェクトがシリアライズ(文字列化)される際に自動的に呼び出される特別なメソッドです。引数はなく、戻り値もありません。
このメソッドの主な役割は、シリアライズの対象となるプロパティを制御することです。__sleepメソッドは、シリアライズしたいプロパティ名を配列で返します。配列を返すことで、指定されたプロパティのみがシリアライズの対象となり、それ以外のプロパティはシリアライズされません。
サンプルコードでは、MyDOMDocumentFragmentクラスがDOMDocumentFragmentを継承し、__sleepメソッドを実装しています。__sleepメソッドは空の配列を返しているため、どのプロパティもシリアライズされません。private $dataプロパティはシリアライズ対象から除外されます。
また、__wakeupメソッドは、オブジェクトがデシリアライズ(文字列からオブジェクトへ復元)される際に自動的に呼び出される特別なメソッドです。このメソッドを利用することで、デシリアライズ後のオブジェクトに対して初期化処理などを行うことができます。サンプルコードではコメントアウトされていますが、データベース接続の再確立やプロパティの初期化処理などを記述できます。
この例では、シリアライズ時にdataプロパティを除外することで、機密情報を保持したままオブジェクトを安全にシリアライズする、といった使い方が可能です。PHPの組み込み関数であるsleep関数とは異なり、__sleepはオブジェクトのシリアライズ処理に関わるメソッドである点に注意してください。sleep関数はプログラムの実行を指定秒数一時停止させるための関数です。PHPの標準のsleep関数ではミリ秒単位の指定はできません。
DOMDocumentFragmentクラスの__sleepメソッドは、オブジェクトをシリアライズ(文字列に変換)する際に自動的に呼ばれます。このメソッドを使うと、シリアライズ対象から特定のプロパティを除外できます。サンプルコードでは、$dataプロパティがシリアライズされないように設定されています。
__sleepメソッドの戻り値は、シリアライズするプロパティ名の配列です。空の配列を返すと、すべてのプロパティがシリアライズされません。__wakeupメソッドは、デシリアライズ(文字列からオブジェクトに戻す)後に呼ばれます。除外したプロパティの初期化処理などを記述できます。
PHPのsleep()関数は秒単位で処理を一時停止させる関数です。ミリ秒単位でのスリープは、PHPの標準関数では直接サポートされていません。より細かい時間精度が必要な場合は、usleep()関数(マイクロ秒単位)などの代替手段を検討する必要があります。